頼れる親友に会いに

翌日、王城へと向かった。


馬車は、王城に向かい石畳の道を揺れながら進んでいた。目の前に座るクレメンテとレウルスは窓の外をちらちらと気にしていて、どこか落ち着かない様子だ。


「クレメンテはともかく、レウルスまでどうして緊張しているの?」

「ルイーズは殿下と幼馴染でもあるから気楽だろうが、オレたちは違う」

「いや、レウルスは貴族で、異国の平民の僕こそ大いに違うよ」

「2人とも構えなくて大丈夫よ。今のヘンリー様はとても穏やかになられたわ。最近はお話するのが楽しいぐらいよ」

「それはそれで気になるな」


レウルスが言う。


「そう?」


言っていて思い出した。そう言えば、前回ヘンリーに会った時に側室にならないかと冗談で言われたのあった。


(ヘンリー様もだいぶ私に気を許すようになったものだわ)


思い出し笑いをするルイーズを妙な目で見るレウルスだった。


――城へは順調に着いた。もともと公爵家からさほど城は離れていない。


通された部屋にて3人で待っていると、ヘンリーとリリアンがやって来た。


「来たな」

「ええ。リリアン様もお元気そうで良かったわ」

「今回は、きちんといるわよ」

「ええ、お会いできて嬉しいですわ」


お茶の用意がされる。リリアンのお茶だけ種類が違うようだ。


「そちらのお茶はリリアン様のお気に入りなの?」

「近頃、味覚の変化が出たのよ。妊娠したから」


あまりにも自然にサラリと言うので、聞き逃しそうになった。


(……妊娠!?)


ついこの間まで、“子どもはまだ考えられない!”と帰国していたはずなのに、と驚いた。


「え?妊娠されているのですか?」


リリアンはうなずいている。ヘンリーはちょっと慌てていた。


「実は、正式な発表はこれからだったのだが。……リリアンが言ってしまったから、ここだけの秘密でな」

「それはもちろん」


まだ、公表されていないことを平気で言い放つリリアンは、やはりリリアンだった。


「具合は?気持ち悪くなったりしないのですか?無理しないで下さい」


つい、昨日、モニカのつわりを見たばかりなので心配になった。


「つわりはひどくないわ。……私をここから追い出そうとしているなら負けないわよ!」

「そんなことは一言も申しておりません。ただ心配しているだけです」

「リリアン。そういう言い方は良くないと言っているだろう?ルイーズは心配してくれているだけだ」

「ルイーズの味方をしないで!ヘンリー様は私の味方でしょう??」


なんだかリリアンが興奮している。


「……すまない。妊娠すると興奮しやすくなるらしいんだ」

「ええ、知ってるわ。気にしていないから大丈夫よ」


リリアンは身を乗り出すようにして叫ぶ。


「もう!だからそうやって親し気に話さないでったら!」


リリアンのご機嫌は非常に悪かった。


「リリアン、ちょっと部屋に戻ろうか。疲れただろう?......しばらく、席を外す。くつろいでいてくれ」


ヘンリーはリリアンを連れて退席して行った。


「……はあ、どうなるかと思ったよ」


クレメンテが、息を吐いている。


「リリアン様と話したことはなかったが、元々、ああいう方なのか?」

「ええ。思ったことをハッキリと言う方よ。今は赤ちゃんがお腹にいるのもあって、感情が高ぶりやすいのでしょうね」

「だいぶ感情が高ぶってらっしゃったみたいだな。……ルイーズは、苦労していたのだな」


ルイーズは“しぃ”と人差し指を自分の口に当てた。


3人だけとはいえ、どこに耳あるか分からないから発言には気を付ける必要がある。


「……ヘンリー王子は君の元結婚相手だったのだよね?」


クレメンテが小さな声で聞いてきた。


「そうよ。でも、いろいろあって今はこうなっているわ」


ルイーズも小さな声で返事する。


「やっぱりルイーズは立場が全然違う人なんだな。……なのに、レウルスはすごいよ」

「オレだって立場の違いは分かってる。だけど、こうなるまでには紆余曲折があったんだ。簡単じゃない」

「だろうね。君はスゴイよ」


話していると、ヘンリーが戻って来た。


「悪い。待たせたな」

「いいえ、リリアン様の側にいなくて平気なの?」

「正直言うと、オレもちょっと休憩したかった。最近のリリアンは、主張が激しくてな」

「そうなの?」

「南のフルーツが食べたいとか、氷菓子が食べたいとか、海に入って遊びたいだとか、まあ言うことがメチャクチャなんだ。だから、ちょっと疲れてる」

「きっと、あなただから言っているのよ。甘えられるから」

「まあな」


ヘンリーと話していると、じぃっとレウルスの視線を感じた。親し気に話し過ぎただろうか。


「今日はメッツォにしばらく滞在するから挨拶に来たのか?」


相変わらず、彼はこちらの情報をしっかりと把握していた。


「ええ。メッツォで活動することになるわ。レウルスのお父様の容態のこともあるし、1年ほどはこちらにいることにしようかと。だから、あなたにはこちらでの活動を見守って欲しいの」

「応援しろ、ということだな?」

「親友は大事でしょう?」

「お前は案外、ちゃっかりしたところがあったんだな」

「今さら知った?」


仲良く話していると、そっとレウルスに腕を引っ張られたのだった。

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