やっと合流したギャエルたち

パーティーをした翌日、再び頭を抱えるレウルスがいた。


「頭が痛い……」

「レイニーさんに飲まされていたわね。彼、私たちのことで、とっても驚いていたわね」

「ああ。衝撃的だったみたいだ」


レウルスの身内であるレイニーにだけは、ルイーズとレウルスの関係を打ち明けた。


多くのことを尋ねられたが、ルイーズはレウルスを信頼が愛に変わったのだと説明した。


(本当は私の一目惚れなのだけど。でも、そのことは、レウルスと恋人だと公表できた時に本人に言いたいから)


昨日の会話を思い出す。


『君は違う者と付き合っていたと聞いていたのに』

『ええ。彼とは別れたけれど、今は友人よ。なんと言っていいか分からないけれど、本当にいろいろなことがあったの』

『恋ってそういうもんだから、まあ分かるよ。で、お前は?いつからオリビア、いや、ルイーズのことを好きだった?』

『気付いたら好きだった』


レウルスから“好き”と言われて、ルイーズが恥ずかしそうにすると、レイニーは額に手を当てて、ふうと息をつく。


『信じられないが、あのレウルスが惚気ている。しかも、相手はルイーズ。なんてこった!』

『おい、失礼だろ』

『ルイーズは美人だしマジメだし、お嬢様で音楽の才能に溢れている。それがお前の恋人?奇跡だろ!」

『兄貴のこと、応援してやらないぞ』

『悪い。正直に言い過ぎた』

『おい』


兄弟で小声ながらワーワーやっていた。


『兄貴、この話はここだけの話だぞ。演奏会が成功してきちんとオレたちが評価されて初めて公表するつもなんだ。ルイーズの父上にも許可をとりたいし』

『そうか、お前も成長したんだな』


レイニーがレウルスの頭をわしゃわしゃと撫でた。レウルスは“ヤメロ!”などと反抗していたが、兄弟のやりとりが微笑ましく思ったのだった。


「ルイーズ、また騒がしくなる前に練習をしよう」


今日は、練習場に朝からやって来ていた。やっとギャエルが合流すると聞いている。


「ギャエルはどこに泊まるつもりなのかしら?今回、イザベラ夫人はずいぶんと寛容じゃない?」


レウルスと最初の演奏旅行の時は、イザベラ夫人がレウルスをかなり厳しく管理したらしい。


今回はメンバーに、自由なギャエルがいるせいか、自主性に任せたのだろうか。


「イザベラ夫人はもうメッツォには着いているそうだぞ。買い物やら人と会ったりしているみたいだ」

「あら、私には教えてくれないのに」

「オレが伝えると思っているみたいだな」

「いい加減ね。ギャエルにはきちんと伝わっているのかしら?」

「さあ」


話が落ち着くと、練習に励んだ。やはり慣れ親しんだフルンゼの練習場は落ち着く。父が支援したことで練習場の音環境もかなり良くなっている。


練習場に響く音は、以前よりもずっとクリアで豊かな音色に聴こえた。


……そろそろ、お腹が空いて来る時間になると、ドアをノックする者が現れた。


「オレだ。ギャエルだ」

「ギャエルがやっと来たわね」


レウルスが扉を開けると、ギャエルがポケットに手を突っ込んでニラむように立っていた。相変わらずオラついている。


「久しぶりね」

「そうか?」


ギャエルは練習場に入ると、ぐるりと周りを見渡した。


「ここがお前たちの所属していたフルンゼか。思ったより、いいじゃねえか」

「うちの父が面倒を見ているから、音響はいいと思うわ」


ギャエルがさっそく試すように、バイオリンを取り出すと弾き始めた。


「うん、悪くない。早速やろう」


ルイーズたちも楽器を構えると、ギャエルと目を合わせて演奏を始める。


(今日も彼は調子がいいわ。ギャエルは態度やバイオリンを弾く姿は印象的なのに、手元にムダがなくてとても計算されている。こちらの演奏もしっかりと聴いて目線を投げかけてくるし)


ギャエルがいると、不思議と雰囲気がピリッとする。こんな気持ちになるのはギャエルが初めてだった。


(こういうのがカリスマというのでしょうね)


しばらく練習をすると、休憩になった。


「そう言えば、ギャエルはボロゴ楽団のヴェネジクトというバイオリニストに憧れているのだったわね?彼には会わないの?」

「そう思っていたが、今はまだその時じゃない」


ギャエルも今度の演奏会には並々ならぬ力を注いでいるはずだ。ヴェネジクトに堂々と会うためにも、演奏会を成功させたいと考えているはずだ。


「演奏会、成功させましょうね」

「当たり前だろ」

「お前は知り合いのピアニストの所に泊まるのか?」

「そうだ。あいつはオレの地元の初等音楽院で一緒だった後輩で、面白いやつだ。ヒマさえあればずっとピアノを弾いてる」

「へえ」

「まあ」


類は友を呼ぶ、という言葉がメッツォにあるが、それなのだろうなとルイーズは思った。


「オレは今度の演奏会が成功したら、そいつとも演奏会をやってみたい」

「あなたが言うのならば、その人は優秀なのね」

「オレ的には優秀だと思ってる。世間での評価はまだだけどな」

「今度会ってみたいわ」

「そのうちな」


午後、遅れてやっとイザベラ夫人たちが顔を出した。


夫人はレイニーを見ると美男なので、見とれていた。さっそく、商売の話を始めていたが、隣にいたマヌエル氏がそれとなくレイニーから夫人を引き離している姿がなんだか面白かった。


そうして1日が過ぎたのだった。

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