再会と祝杯と……恋の打ち明け話

しばらくレイニーと抱き合ったまま再会を喜んでいると、レウルスが黙って視線を送ってくる。


「あまりにも懐かしかったから。……失礼したわ」

「いやいや、さあ早く入って」


レイニーはルイーズの手を取ると、練習場へと迎え入れる。御者には、練習場近くの商会で再び待つように伝えておいた。


レイニーとルイーズは、離れていた間も手紙のやりとりをしていたせいか、再会した今、以前よりも距離が縮まった気がしている。


「まずは、特別賞と銅賞おめでとう!しかも、オリビアは以前にも増してキレイになってる!」

「ありがとう。オリビアと呼ばれるのも嬉しいけれど、ルイーズとぜひ呼んで。敬称もなにもなくね。キレイになったと言ってくれるのはとても嬉しいわ」

「本当のことだからだよ。いろいろとあった分、本当にキレイになってる」

「ふふ、そんなに言われると恥ずかしいわ」


レイニーに久しぶりに頭を撫でられて照れていると、レウルスが咳払いをした。


「おい、兄貴、オレもいる」

「見れば分かる。なんだよ?」

「オレたちは練習をしに来たんだ。邪魔しないでくれよ」

「相変わらず、お前は無愛想だな」


フルンゼの練習場に来たら、レウルスは元のレウルスに戻ったみたいだった。眉間にシワを寄せている。


「レウルスたちのチェロとバイオリンも随分と進化したみたいだし、聴かせてもらおうか」


レイニーは近くのイスに座ると、さあどうぞ、とばかりに手の平を向けてくる。


ルイーズたちは、“恋の挨拶”を奏でた。


レウルスはまるでチェロと一体になったように、音に身を委ねて弓を走らせる。何度も一緒に演奏してきたから、彼の音の癖も、タイミングも、すっかり身体に染みついていた。


以前よりも深みのある演奏ができた気がする。


「スゴイ!2人ともいいよ!」


レイニーが立ち上がって拍手をしてくれた。


「いいなあ。オレも留学したくなった」

「兄貴も行きたければ行けばいい。フルンゼの面倒を見る人はほかにもいるだろう」

「お前、簡単に言うなぁ」


レイニーはチャラチャラしてそうで、実は誰よりも面倒見がいい兄貴肌だ。なかなか、彼らをほかの人に任せる気にならないのだろうとルイーズは感じた。


「もう少ししたら、皆もやってくる。今のうちにどんどん練習しておけよ」

「ああ」


それぞれの楽器の音が、練習場の壁に反響する。——そんな時間がしばらく続いた。


......しばらくすると、練習場の扉を開けて入ってきたのは、フルンゼの華であるミアとシャーロットだった。


「わあ!レウルス!オリビア!入賞おめでとう~!」


彼女たちはルイーズたちを見ると、レイニーと同じように歓迎してくれた。その後にやってきたトランペット担当のブラッドやコントラバス担当のモーリスたち皆も以前のように接してくれる。


大勢が集まると、皆、思うまま質問をしてくるので収集がつかなくなった。自然と夜は皆で飲みに行こう!という話になる。


「それなら、うちの商会ホールを使いましょう。パーティーの準備も任せて」


ルイーズが言うと、皆、賛同した。


「やろう!やろう!」


ルイーズが急いでパーティーの用意をするように自ら知らせに行こうとすると、レウルスも付いて来てくれた。


使用人たちは話を聞くなり、全力で準備を始める。ルイーズの家では、“迅速な行動”がモットーなので、急な対応もできるようにしていた。


レウルスが心配したように尋ねる。


「急だったが、いいのか?楽団員全員の食事となるとそれなりだぞ?」

「お金の心配はしなくて平気よ。うちの使用人たちは皆プロだもの。しっかりお給料も払ってるし、任せておけば大丈夫だわ」

「なるほどな」


練習場に戻って練習を続けたが、皆、なんとなくソワソワして集中しきれていない様子だ。皆、いつの間にか楽器を片付け始める雰囲気となっていた。


そのまま商会のホールへと向かうと、ご馳走が長テーブルに所狭しと並んでいる。お酒も用意されていて酒好きらしい楽団員から声が上がった。


すぐに宴会が始まって、グラスのぶつかる音や笑い声が絶えず響いてまるで音楽祭のようだ。


トリアのこともたくさん聞かれたし、それぞれの近況なども話し合った。


......今は、隅の席の方でレイニーとレウルス、ルイーズの3人で話していた。


「えっ、レイニーさんにいい感じの女性ができたの?」

「しぃ、小さな声で頼むよ。あいつらに聞こえるといろいろと聞かれて面倒だから」


レイニーは酒で赤くなった顔で、とっておきの打ち明け話をしてくれた。


「相手は?」


レウルスも興味を引かれたようで聞いている。


「ここだけの話だぞ。相手はとある伯爵令嬢なんだ」

「あら、そうなのね。どこで知り合ったの?」

「演奏会で……。オレの演奏に感動したと言って涙ながらに話しかけてくれて……」


似たような思いをした経験のあるルイーズは思わず、レウルスを見て微笑んだ。レウルスもルイーズの考えていることがすぐに分かったようで、ニヤリとする。


「なんだよ、レウルス、身分違いだって笑ってるのかよ?」

「いや。幸せになれるといいな」

「他人事だな。でも、ありがとうな」

「兄貴はその恋、悩んでいるのか?」


レイニーが打ち明けてくれた割に悩まし気なので、レウルスが尋ねる。


「どう考えても、相手は格上だ。オレじゃ見合わないだろ」

「あら、まあ」


再び、ルイーズはレウルスと目を合わせた。


「私たちもあなた方と同じようなものかも……でも、そんなの関係ないわ」


ルイーズが言葉と共に、そっとレウルスの手に手を重ねる。レウルスは一瞬、動じたようだが、ルイーズの手を優しく包んだ。


その姿を見たレイニーは、仰天した様子を見せている。


「え、2人はそんなまさか……ウソだろ!?」

「しぃっ、秘密よ」


レイニーは、信じられないといった様子で2人を交互に見たのだった。

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