コルネ公爵家の尋問ディナー
レウルスが実家から戻って来た。
実家にはレイニーも戻ってきて、家族水入らずで過ごしたらしい。
「レウルスのご両親について聞きたいと思っていたの」
「うちの両親?普通だけどな。まあ、皆、音楽家だから普通とは違うといえば違うかもしれないが」
レウルスを屋敷に招いてお茶をしていた。もう少ししたら父と兄が帰宅してくるので、一緒に食事をすることになっている。
「父も母も今は演奏指導しつつ、地道に演奏を続けてるよ」
「そうなのね。見た目はレウルスに似ている?」
「なぜ、そんなことを聞く?」
「え、だって歳を重ねたらレウルスも似るのかなと思って」
「歳を重ねたら、か……」
ルイーズの軽い気持ちで聞いた質問が、引っ掛かったようだ。
(つい、レウルスとの将来を想像して言ってしまったけど、迂闊だったわ)
「えーと、ところで、レイニーさんに会いたいわ。フルンゼの皆にも」
「兄貴もルイーズに会いたがっていたよ。演奏会の練習にフルンゼの練習場を使っていいってさ」
「それは嬉しいわ!」
「あそこは、オレたちの出発の場所だしな」
「ええ」
レウルスと目が合うと、いい雰囲気になる。
ルイーズがチラリとジーナを見ると、彼女は気を利かせて部屋の外に出て行った。
レウルスはルイーズの横に移動すると、顔を近づけてくる。ルイーズは目を閉じた。
「お嬢様!お嬢様!」
唇が重なろうとする瞬間、ドア越しに声をかけられた。
二人はビクリとすると、すぐに離れた。レウルスは慌てて、向かいの席に戻る。
「お嬢様、扉を開けますよ!」
扉が開く。なんだかジーナが焦っていた。
「旦那さまたちがたった今、帰宅されました。こちらにご案内しますね」
父たちが想像よりも早く帰宅してきた。ジーナが急いで部屋を出て行く。
「焦ったわ……」
「オレもだ……」
「……私たちのこと、演奏会後にきちんと話せるといいわね」
「ああ」
父と兄が居間に入って来た。
「レウルス君が来ていると聞いたから急いで戻って来た。この前も言ったが、君はルイーズの人生を変えた人物だからな。話を聞きそびれていたから話すつもりで帰って来たぞ」
兄がなんだかゴチャゴチャ言っている。前回、トリアに来た時はアードルフとばかり話していたからレウルスと話さなかっただけではないか、と冷ややかな視線を送る。が、兄は気付いていない。
「私もこれから活動を一緒にやると聞いて、君とじっくりと話したいと思っていたのだよ」
父も質問攻めにする気満々だった。
「ちょっとお父様、お兄様、レウルスを困らせないで」
「いや、私は全ての疑問に誠心誠意、お答えします」
レウルスが言うとさっそく父と兄はソファに陣取り、あれこれ聞き始めた。
「どうも、酒が無いとどうも話も盛り上がらん。レウルス君はメッツォの酒も久しぶりだろう。飲もうじゃないか」
(もう、お父様たちったら、レウルスになにを根掘り葉掘り聞きたいのかしら。こちらが落ち着かないわ)
ルイーズは、ハラハラしてお酒を飲むところじゃなかった。
「レウルス君は、バイオリニストとして活動しているわけだが、今後、どう売り出していくつもりなんだ?」
「お父様、面接ではないのですよ?」
「ルイーズと三重奏をするメンバーになったんなら、彼の今後も気になるじゃないか。場合によっては支援もせねばならん」
「そうだよ、ルイーズ。お前がこの国に帰って来て、かつて不名誉だとされた評価を挽回しなくちゃいけないんだから」
「私、.........かなり評判が落ちておりましたの?」
ルイーズが言うと、兄は慌てた。
「いやいや、ヒマな貴族たちが勝手に言ってただけだ。無論、父と僕は、ルイーズは音楽の才能を伸ばすためにした選択だと言ったさ」
ふう、とルイーズは息を吐いた。
(この国に帰ってくれば、風当りが強いのは分かっていたことだわ)
「私、レウルスとギャエルとでトリアで学んだことを証明したいと思いますわ!彼らに好き勝手言わせません!」
ルイーズが言うと、レウルスも口を開いた。
「私もルイーズ嬢とギャエルと共に、メッツォで名を上げたいと考えています」
「そうか。我々も君たちをしっかりと支援しよう。ギャエル君もトリアでかなり有名なバイオリニストだそうだな。まだ、見たことはないが、かなり個性的だと聞いた」
「ええ。彼は、態度が悪いように見えてしまうかもしれませんが、演奏が素晴らしいのよ」
「今夜、彼も招待できなかったのが残念だ」
ギャエルは知り合いのピアニストに会うだとかで合流できていなかった。
彼が関心を持つ人とは、どんな人なのだか気になっている。
「レウルス君、今夜は泊まっていきなさい。まだまだ話に付き合ってもらうぞ」
「そうだ、そうだ。君のプライベートについても良かったら聞かせてくれ」
父も兄もレウルスのまだ事情聴取をする気満々であった。
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