久しぶりの王城にて

昨晩、父と兄がルイーズを大歓迎してくれた。


父にお気に入りのトリアのワインをプレゼントすると、ものすごく喜んだ。


兄のルースには定番だが万年筆をプレゼントした。トリアらしい優美なデザインでメッツォの質実剛健的なデザインとは違ったからかなり喜んでいた。


「はい、これはモニカ様に」

「モニカにもお土産があるのか?」

「それはそうよ。お兄様の奥様になるのでしょう?」

「ハッハッハ。ありがとう、ルイーズ」


兄と恋人のモニカの結婚式はもうすぐだった。


ちなみに、モニカにはトリアのアクセサリーをプレゼントに選んだ。


「トリアでの話をいろいろと聞かせてくれ」


お土産のプレゼントを渡した後は、トリアでの生活を話した。


「.......アードルフ君から手紙が届いたのだが、あれはどういう意味なのだ?」


アードルフは、本当にメッツォに来るつもりらしく、手紙を父に送ったようだ。会う許可がとれればメッツォに来ると言っているのだとか。


「彼とは別れましたが、今では良い友人なの。だから、お父様とお兄様と仲良くしたいのだと思うわ」

「仲良く?」

「えーと、私と付き合っていた時に許可をとらなかったことや、別れてしまったことを謝りたいのだとか」

「今さら聞いてもなにもならん」

「そんなことに気にするならルイーズと別れるべきじゃなかったんだ」

「それは........いろいろとあるのよ。恋多きお兄様なら分かるでしょう?」

「ん? まあ、な」


小うるさい兄がやっと黙った。父は一応、トリアの王室関係者が来ることもあり、会うつもりはあるようだ。きっと、別れた原因を根掘り葉掘り聞くのだろう。


父と兄には詳しくは別れた原因については話していない。性格の不一致だと説明していた。


「ところで、ルイーズは早々に王城に行って挨拶をしなければならんぞ」

「ええ、もちろんそのつもりですわ。皆様、お元気かしら?」

「それは行けば分かるさ」


兄がなにか含むような言い方をした。


「妙な言い方をしますのね?」

「ちょっとした問題が起きててね。きっとヘンリー殿下とも会うだろうから、その時に本人から聞けばいいよ」


兄がずいぶんとヘンリーに対して気安い言い方をしている。


「お兄様はヘンリー様と親しくなったの?そんな口ぶりだわ」

「ああ。殿下が学園を無事に卒業されてから、業務で関わることがあるからね。以前よりも気軽に話すことが増えたよ」

「そうなのですね」


ヘンリーは言葉足らずでよく分からないところがあるが、兄と気さくに接しているところを見ると、この2年間で変わったのかもしれない。


「リリアン様に会うのが楽しみだわ。彼女、相変わらずなのかしら」

「ふむ。相変わらずであろう」

「そうなのね」


..........そんな情報を得て翌日、王城へと向かった。


「久しぶりだな。トリアとの友好に尽力してくれていてご苦労」

「1年の留学が3年になるとは予想外だったけれど、トリアとの関係がより良好になったのは良かったわ」


王と王妃に挨拶すると、まずまずの反応でホッとした。第一王子のカルロにも挨拶をしたが、ヘンリーの姿は無かった。


(殿下にも久しぶりにお会いしたいと思っていたのだけど……)


謁見室から出ると、従者に別室に案内された。部屋にはヘンリーがいた。


「久しぶりだな」

「ええ、本当に」


お互いにいろいろとあったせいで、とても懐かしく感じられた。


「リリアン様はどちらにいらっしゃるのですか?」


部屋にはヘンリーしかいなかった。


「……まあ、座れ。茶でも飲もう」


メイドがすぐにお茶の用意をする。お茶を飲んで一息つくと、ヘンリーが口を開いた。


「実は、リリアンとケンカしてな。彼女は、帰国中だ」

「えっ!?大ごとではないですか!」

「帰国の建前は、リリアンの兄の子どもが生まれたから顔を見に行っている、ということになっている」

「そうなのですね。それにしても、どうしてそのようなことに?」


理由が知りたくなって聞いた。


「オレの話はともかく、そちらの話も知りたいと思っている。……ルイーズ、かしこまらずに気軽に話そう」


ヘンリーは以前と違って、なんだか余裕を感じる対応をしていた。リリアンと結婚して丸くなったみたいだ。


「気軽にって、失礼になりませんか?」

「オレが言っているんだから、いいんだ」

「ならば……。トリアでのことはどれから話すべきかしら?」

「オレが知っているのは、アードルフというやつと付き合い出したところまでだ。別れたんだろ?なぜだ?」


ヘンリーはこちらの状況をきちんと把握していた。


(それはそうよね........)


「簡単に言うと、元婚約者が現れて彼女を支えるために彼が私から離れたからよ」

「ずいぶんとアッサリ言うな。男をとられたということだろ?」

「まあ。でも、私も離れたかったから丁度いいの」

「..........オレの前でそういうことを言うのか?」

「あ.......。でも、今、あなたは幸せでしょう?ケンカしているとはいえ」

「そうではあるな」


ヘンリーはヒザにヒジを置いてリラックスした様子だ。以前の、堅苦しい様子が無くなっている。


「オレは、そんな情けないやつにルイーズをとられたのか」

「とられた、だなんて......。あなたにはリリアン様がいたくせに」

「痛いところを突くな」

「事実だわ」


フフフと笑い合う。自然と、互いに笑みがこぼれた。


「その情けない男は、元婚約者と結婚するのか?」

「いえ、そうはうまくいかないみたいだわ」

「目の前にいたら殴ってやるのにな」

「あなたがどうして? 彼は優しすぎて傷ついている人を放っておけないのよ」

「お前を支えることもできないやつが、ほかの者の面倒を見るなんて不相応だ」

「……あなたがそんなふうに言うなんて、ちょっと意外だわ」


カップから立ちのぼる湯気が、ふわりと頬にかかる。ほんのりとした香りと温かさが、彼との会話をどこか心地よいものに感じさせた。


「なんだと?」


笑いながら言うヘンリーは穏やかで、以前の気難しい彼の姿とはまるで違ったのだった。

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