思わぬ飲み会
放課後になった。
例のごとくフローレンスがうまく仕切り、コンラートと共に店など手配してくれた。
「今日は、アードルフ兄の店に行くことにしたよ」
「あのお店ね。久しぶりだわ」
トリアに来てから初めて飲み会をした店でもある。
「ルイーズは、今日は飲みすぎたらダメだからね」
「当たり前だわ。酔ったら兄が心配するもの。兄は私をまだ小さい子だと思っているし」
「アハハ」
店までは二手に分かれて、馬車に乗った。1つはフローレンスとコンラート、レウルス、ディーターの4人、もう1つの馬車はアードルフとルイーズのメンバーだ。
「アードルフ兄と2人きりならいろいろと話せるんじゃない?あのこととか」
馬車の割り振りをしたフローレンスにそっと言われた。
確かにアードルフは、試験が終わったら話したいと言っていたし、丁度いいかもしれない。
馬車に乗り込むと、アードルフと向かい合う。彼はニコリと微笑んだ。
「.......アードルフには試験前から送ってもらっていたけど、改めてこうして向かい合うとなんだかくすぐったい気持ちになるわ」
「なぜ?僕はいつも通りだけどな」
(なぜって、それはやはりエレオーラのことが関係しているのだけど.........)
「そちら側に行っていいかな?」
返事をする前にアードルフが隣に座る。身体の横がピッタリくっつく。
「近くないかしら?」
「恋人なら当たり前の距離だろう?」
「そうかもしれないけれど........」
キス事件から時間が経ったとはいえ、彼とこうして身体を密着するのはなんだか抵抗を感じる。
「ルイーズ、身体がこわばっているみたいだ」
「その、久しぶりだから慣れない感じがするの」
「……試験期間はただ送るだけだったしね。こうしてリラックスして馬車に乗るのは、少し違うように感じられるのかもしれないな」
そう言うと、アードルフは向かい側の席に戻った。座ると窓の外に視線をやっている。
(もしかしたら私、彼が話そうとするチャンスをつぶしてしまったかしら)
店の前に着くと、アードルフが手を携えられて馬車を降りた。
「........ルイーズ、話せた?」
寄って来たフローレンスが聞かれる。
「いいえ。そういう雰囲気にはならなくて」
「そうなんだ……。まあ、話すには時間が足りないよね」
「ええ」
店に入ると、おすすめの料理や裏メニューをアードルフがテキパキと注文した。新作の料理もいくつかあるらしい。
.......兄が遅れてやって来た。
「OKがとれたのね。でも、恋人の方、寂しいんじゃないかしら?」
「大丈夫。その分、たくさん触れ合ってきたよ」
「..........お兄様からそういう話を聞くのは、なんだか恥ずかしくなるからヤメて」
「ハハハ、そうだな。 さあさあ、皆で乾杯しようじゃないか!」
乾杯の声が響き、グラスが軽くぶつかる音が店内に広がった。
すぐに料理の香りと笑い声が混ざり合い、自然とワイワイした雰囲気に変わっていった。
「アードルフ君は、うちのルイーズのどこがいいんだい?」
しばらくすると、トリアの度数の強い酒を飲んで気分が良くなった兄が面接じみたことを始めた。
「やめてったら、お兄様!」
「アードルフ君は、あの殿下との別れの要になった人物だぞ。兄の僕がしっかりと聞く必要があるじゃないか」
「.......アードルフ、ごめんなさい。お兄様は心配症なの」
「全くかまわないよ。僕もルイーズの兄上ときちんとお話したいと思っていたんだ」
アードルフはいかにルイーズが自分にとって大切であるかを話した。
「ふむ。なかなかアードルフ君は見込みがあるみたいじゃないか」
アードルフを気に入った様子の兄は、彼と肩を組んで酒を飲みだした。アードルフの顔には笑みが広がっている。
「もう。お兄様は調子がいいんだから.......」
タメ息をつくと、端の方で同じようにタメ息をついているレウルスの姿が目に入ったのだった。
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