兄との久しぶりの再会

試験結果が分かる日だった。


フローレンスとディーターは、予想以上に結果が出たらしい。嬉しそうな顔をしている。


「試験も終わったし飲みに行こう!」

「行こう!行こう!」


フローレンスとディーターがさっそく騒いでいた。


「ちょっと、フローレンス。そんな大きな声で叫ぶのは、さすがにはしたないわ」

「ちょっと声が大きすぎた?嬉しくて~。あ、ルイーズはどうだった?」」

「いくつかミスしたけど、まあまあね」

「そっか~。レウルスは?」

「オレも、まあまあだな」

「2人の言う“まあまあ”はイイって意味だよね。もう分かってるよ!」


フローレンスは意外とこちらの成績も把握しているみたいだった。


「じゃ、心配事もないわけだし久しぶりに飲み会しようよ!」

「飲み会はいいが、オレが参加したらアイツが嫌がるんじゃないか?」

「いい加減仲直りしようよ。不仲でいるのは疲れるでしょ。皆で楽しく飲もう!」


皆でワイワイしたいフローレンスは言う。


「........まあ分かった。店は任せていいのか?」

「うん!」


皆で飲むのは一体、いつぶりだろうと考えていると事務室の女性に声をかけられた。


「ルイーズさん、お兄様がお見えです」

「え、もう?」


思ったよりも早く兄がトリアに到着したようだ。


「え、お兄様?ルイーズのお兄様がトリアに来たの?」

「ええ。恋人を連れて来ると手紙をもらったわ」

「恋人連れ!ルイーズのお兄様、見てみたい!」

「オレも!」


フローレンスもディーターも興味深々だ。


「ルイーズの家はあのフルンゼ楽団を支援しているんだよね?ということはお兄様も関わっているんだよね?」

「まあ、そうね」


ディーターはフルンゼ楽団のファンだからそちらの方で関心があるようだ。


というわけで、待合室の方に皆でゾロゾロと行くことになった。


こちらに気付いた兄が満面の笑みを向けた。


「ルイーズ!元気そうだな?お兄様だぞ!会えて嬉しいか?」


兄は言いながら抱きしめてくる。ちょっと........いや、かなり恥ずかしい。


「お兄様、私は小さな子じゃないの。会えて嬉しいけれど」

「うんうん、そうか。お兄様も嬉しいよ」


兄は全く聞いていないようだ。小さい子扱いが抜けない。


「ルイーズって、溺愛されているのね」


フローレンスの言葉に兄が顔を上げた。


「いやあ、初めまして。君たちはルイーズの学友かな?僕は兄のルースだよ。妹がお世話になっているね」

「私は親友のフローレンスと言います。ルイーズととても仲がいいんですよ」

「そうなのか。これからも仲良くして欲しい。ルイーズは心許せる友人がなかなかできないからね」

「そうなんですか?こちらに来てからはノビノビとしているせいか、私のほかにも仲良くしている人は多いみたいですよ」

「そうなのか。詳しい話を聞きたくなるな」


兄が保護者ヅラをしている。兄が根掘り葉掘り聞きだそうとしているのが分かる。


ディーターも意気込んで挨拶をしていた。いかにフルンゼに興味を持っているかを話していた。


「フルンゼも意外と知られているのだな。フルンゼと言えば、君だ」


兄がレウルスを見た。


「ご無沙汰しています」


レウルスが頭を下げた。


「君とはきちんと話したことがないな。君の兄のレイニー君とは話すことはあるが。僕は、以前から君と話したいと思っていた」

「あの、それはどういった意味ででしょう?」


レウルスが真意を探るように尋ねる。


「ルイーズの人生を変えた人物だからだ。君が現れてからルイーズはフルンゼに入団し、こうしてトリアに来ることになった」

「........確かに私が要因になったとは聞いています。ですが、決断したのは彼女です」

「うん、そうだ。君はなかなかしっかりした人物らしいな。今、少し話しただけだが、ルイーズが尊敬するというのがなんとなく分かる気がする」


兄からの悪くない反応にルイーズがホッとする。


「ルイーズは美人だろう?こんな美人に尊敬しているなんて言われたらつい、その気になってしまうかもしれないが...........」


兄がなんだか分からない牽制をしだした。慌てて止める。


「ちょっと、お兄様!なにを言い出すの?」

「お兄様はルイーズが心配なんだ」

「そんなことを言いにトリアまで来たなら“帰って”と言うわよ?」

「ヒドイ。お前に会わせようと恋人を連れて来たのに」

「私のためだというの?」

「いや、それだけじゃないが。とにかく、お兄様はルイーズをいつも心配している」

「.........で、その恋人の方はどうしたの?」


見たところ、兄の姿しか見当たらない。


「彼女は屋敷で休ませているよ。身体があまり丈夫ではない人なんだ」

「え、それなのに連れて来たの?」

「彼女が望んだから......。ちょっとした新婚旅行みたいなものさ」

「結婚するのね?」

「そうなると思う」


ルイーズは義理の姉になる人がどんな人なのだろうと気になった。


「あの、お兄様。今度は大丈夫?騙されることが多かったでしょう?」

「そう言うと思った。大丈夫。彼女はとても控えめで優しい人だよ。それより、皆の前でそんなことを言われたら恥ずかしいよ」


しっかりと周りにいた皆は聞いていたが、聞こえないフリをしてくれた。


「あのー、お兄様も良かったら、今晩の飲み会に参加されませんか?皆で飲みに行こう!と話していたんです。恋人の方もぜひ一緒に」


「いいねえ。僕の恋人はおそらく屋敷で休んでいることになると思うんだが、彼女がいいと言えば参加しよう」


兄は学友たちがどんな人物なのか知りたいのだろう。飲み会参加に乗り気だ。


アードルフとコンラートにも飲み会のことはすぐに伝えられた。


「お兄様、飲み会には私の恋人も来るわ」

「ああ、当然、彼とも会うつもりで来たんだ。ぜひ、参加してもらわないと」


兄はすっかり父のような心境になっているらしい。


「お手柔らかにね」


(兄には最近あったゴタゴタは絶対に知られないようにしなくちゃ)


妹バカの兄がアードルフのしていることを知ったら、ものすごく怒るに決まってる。


大ごとになるのはゴメンだ、と思っているルイーズだった。

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