夏前、試験期間に突入!

夏季長期休み前の試験がそろそろ近づこうとしていた。


「この前、春だと思ったらあっと言う間に夏を迎えるなんて」

「そうだよ。夏なんてすぐだよ!演奏旅行が楽しみ過ぎる!」


ルイーズの教室に遊びに来たフローレンスが興奮して言う。


「オレも夏が楽しみだなあ。たくさん演劇を観る予定なんだ!兄さんとも語り合いたいし!村にも帰りたいな!でも、その前に試験だ!」


ディーターの夏も予定がギッシリらしい。


「......そう言えば、演奏テストだけど、どう選ぶかで評価が変わるわよね」

「やっぱり、そうよね?」


試験内容の中に、課題曲を選択して演奏するという内容があった。


自由に曲を選択できるといっても評価につながるから、好みだけで選ぶわけにいかない。技術面でも評価される曲を選ぼうと皆、頭を悩ませていた。


「オレはさ、創作演奏もOKだというからそれでいくつもり」

「作曲の方に転科すると、そういう試験もアリなんだ?」

「うん。自作でもいいし、もとからある曲を自由に編曲してもいいんだって」

「楽譜の提出もありなの?」

「いいや。それはないから気楽にできそうだなって」

「とはいえ、ディーターは挑戦者だわ」


試験前になると、さすがに試験勉強一色になる。連日、音楽院に遅くまで残る者も多い。


(私もがんばらなくちゃ)


定期試験が無事に終われば、さっそくディートマル国に演奏旅行に向かう予定になっている。試験でヘマをするわけにいかなかった。


「レウルスは静かだけど、調子はどうなの?」

「オレは、実技は問題ないな。筆記の方が少し手こずっているな」

「レウルスでもつまづくことがあるのね」


ルイーズが言うと、レウルスがピクッとした。


「いや、でも、だいぶトリア語も分かるようになったし、やっぱり問題ないかな」


彼はとても負けず嫌いだ。


「うふふ、そうなのね」

「ルイーズは、今日も遅くまで残るつもりなのか?」

「だって、皆も必死だと私もやらなくては、と思うわ。それに、音楽院で勉強する方がはかどるし」

「だが、無理は良くない」

「あなたに言われても」


レウルスもなんだかんだ言って、音楽院に遅くまで残って勉強している。


「令嬢で音楽院に遅くまで残る者はそこまで多いわけではない。やっぱり心配になる」

「あと試験まで少しだから、それまでよ」


帰宅する時は、ここ最近、必ずアードルフがやってきて屋敷まで送る、というのが続いていた。


アードルフたちは卒業を迎える学年になるから、試験で求められることも多く、試験勉強はかなり大変なはずだ。ただでさえ、彼は音楽院を度々休んでいたから取り戻すのも大変だろう。


(それなのに、無理して私を送ってくれるのは気が引けるわ)


おそらく試験前の今は、エレオーラの元に通う時間もないはずだ。


(彼女とはどうなったのかしら......?)


気にはなるが、あれからデニスには特に指示はしていない。アードルフが自分で話す、と言ったのだ。彼から直接、話を聞こうと決めた。


ランチの時間は相変わらずアードルフとレウルスはギスギスしている。あれほど、お互いに言いたいことを言い合ったのだし、なかなか関係が改善するとは思えなかった。


アードルフはルイーズの側にいることで落ち着いたようだが、今度はレウルスが面白くなさそうな顔をしているのが分かる。


(なんだかとてもやりにくいわ.......)


それにしても、アードルフには自分の知らない激しい一面を持つことを知って驚いた。


彼の最初の印象は、なんでもそつなくこなして女性にも人気がある人、そして自分を大切にしてくれる人、そういったものだったが、実は不安定さや激しい部分も持つ人なのだと、思うようになっている。


(彼を不安にさせたくはないけれど)


付き合う以上は、いい関係を築きたい。だけど、本当はもっと気楽に付き合えたらいいなと思う。


(でも、彼には自分を助けてもらった恩がある。彼が苦しい時は支えてあげるべき)


ルイーズは意外にも義理人情を大切にしていた。


人に尽くすことで自分もいつかは報われる気がするからである。


だが、それが正しい結果になっているかは分からない。


.........試験期間に入ると、慌ただしく試験を受ける日々が続いた。


対策をしておいてたおかげで、特につまづくことなく終えられたと思う。一緒に残って勉強をしていたクラスメートたちも明るい顔をしていたから皆、成果を出せたのだろう。


(はあ、やっと終わったわ。帰ったら旅行の用意をしなくては)


屋敷に戻ると、兄のルースから手紙が届いていた。


なんと、恋多き兄に恋人ができたと書いてあった。しかも、その彼女を連れてトリアにやってくるという。


「お兄様が恋人を連れてトリアに来るんですって!」


興奮してジーナに言うと、彼女はすでに知っていた。


「ええ、知らされておりました。お嬢様は手紙が着くまでは秘密にするようにと。おかげでお嬢様の驚く顔が見られましたわ」

「どうせなら、ここに来てから恋人の存在を明かせば、もっとビックリしたのに!」

「可愛い妹をあんまりビックリさせたら可哀そうだと思ったのでしょう」

「お兄様たちが来るのが楽しみだわ!........あ、でも私はすぐに演奏旅行に出掛けてしまうのよね........タイミングが悪いわ」


お兄様は昔からタイミングが悪いんだから!と思ったルイーズであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る