第37話「再び現れた影」



 雪山から帰って数日後。

オルディナス機関の作戦室に、緊張感のある空気が漂っていた。

壁のスクリーンには、カロス地方北部の小さな街の地図が映し出され、赤いマーカーが点滅している。


「先日からこの街で異常なエネルギー反応が確認されている」

神城の声は低く、張り詰めていた。

「分析の結果、反応の波長はノクス団が使用するアークエンゲージギアのものと一致した」


 その言葉に、佑真は無意識に背筋を伸ばした。

脳裏によぎるのは、ラティアス暴走事件――あのとき見たイベルタルの影。

あれ以来、ノクス団の存在は佑真の中で決して遠いものではなくなっていた。



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「今回は偵察と警戒が任務だ。必要以上に戦闘はするな」

神城は鋭い視線で続ける。

「だが、もし幹部クラスが現れた場合……相応の覚悟を持て」


 机の上に置かれた資料には、体育教師・小長谷大作の顔写真があった。

「……体育教師、か」

 学園で何度か顔を合わせたことはあったが、今はその笑顔さえ偽りに思える。



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 数時間後、佑真たちは機関の車両で北部の街へ向かっていた。

窓の外には雪原が広がり、時折、吹雪が車体を揺らす。


「なんか……前よりも空気が重くないか?」

裕太が小声でつぶやく。


「そりゃそうだろ」総士が淡々と返す。

「前は偶然だったが、今回は敵地に自分から踏み込むんだ」


 その言葉に佑真は口を閉ざす。

ポケットの中のモンスターボールを握り、グレイシアとケロマツの存在を確かめた。

二匹の温もりが、冷えた指先に伝わってくる。



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 やがて車両は街の入口で停車した。

雪に覆われた通りは、不自然なほど静まり返っている。

建物の窓は固く閉ざされ、人気のない商店街が目に入った。


「……やっぱりな。静かすぎる」綾杜が呟く。


 次の瞬間、遠くの路地で黒い影が動いた。

佑真は反射的に目を凝らす――黒いコートに身を包んだ数人の人影。

その胸元には、見覚えのある赤いエンブレム。


「ノクス団……」

胸の奥に、冷たい緊張が広がった。




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