第34話「新しい仲間と帰還」


 雪山の朝は、静かで、どこまでも澄んでいた。

 洞窟を出ると、昨日までの吹雪が嘘のように空は青く晴れ渡り、白銀の世界が陽光を反射して眩しい。


「ふわぁ……よく寝た……って、あれ? ケロマツ!?」


 ようやく目を覚ました裕太が、ケロマツが佑真の肩に乗っているのを見て目を丸くする。

 ライチュウも「ライ!?」と驚いた声を上げた。


「おはよう、裕太。こいつ、昨日助けたんだ。どうやら……俺たちの仲間になりたいみたいでな」


「マジかよ! やったじゃん! これで佑真も二匹目か!」

 裕太が満面の笑みで親指を立てる。

 ケロマツは少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに「ケロッ」と鳴いた。



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 下山の道は慎重だったが、昨日の嵐が雪を均してくれたおかげで思ったより歩きやすい。

 グレイシアは雪の上を軽やかに駆け、時折振り返っては誇らしげに「グレイ!」と鳴く。

 ケロマツは佑真の肩にちょこんと乗り、景色をきょろきょろと見回していた。


「しかし、あのキュレム……本当に伝説だったなぁ……」

 裕太がしみじみと呟く。

「オレ、めちゃくちゃ怒られたけど……写真撮れなかったのだけは悔しい!」


「そりゃ怒られるだろ……」

 佑真は苦笑しながら、懐にしまった氷の結晶に触れた。

 あの夜の出来事は、間違いなく現実だ。

 そして、この結晶はきっと――グレイシアの未来への鍵になる。



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 昼過ぎ、二人は無事に山を下り、街へ戻った。

 オルディナス機関のゲートをくぐると、待ち構えていた神城が腕を組んでいた。


「……随分と遅かったな。雪山で何をしていた?」


「えっと……色々あって……」

 佑真は正直に、ケロマツを助けたことと新しい仲間になったことを話す。

 ただ、キュレムのことは詳しくは言わなかった。氷の結晶だけを見せると、神城は眉を上げる。


「……なるほどな。お前たちは本当に不思議な巡り合わせに導かれているようだ」


 裕太が後ろで苦笑する。

「まぁ、半分は俺が巻き込んだんスけどね……」



---


 その日の夕方。

 訓練場で、ケロマツはグレイシアと並んで立っていた。

 初めは少し緊張していたが、グレイシアが優しく尻尾で背を叩くと、楽しそうに跳ねる。


「よし、今日から俺たちは三人だ。よろしくな、ケロマツ」


「ケロッ!」

「グレイッ!」


 二匹の声が重なり、新しいチームの始まりを告げた。


(……ここからだ。俺たちの戦いも、きっともっと過酷になる。

 でも、この仲間たちとなら――絶対に進める)


 夕焼けに照らされた訓練場で、佑真は静かにそう誓った。




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