第33話「新たな仲間」
眩しい光で目が覚めた。洞窟の入口から、朝日が雪面に反射して差し込んでいる。
昨夜の吹雪は止み、外は静かで、白銀の世界が広がっていた。
「……朝か」
ゆっくりと体を起こすと、キュレムの姿はどこにもなかった。
奥の洞窟も静かで、まるで最初から何もいなかったかのようだ。
(……夢、だったのか?)
胸の奥に不安がよぎる。
だが、腕を見た瞬間、心臓がどくんと鳴った。
昨夜、キュレムから受け取った氷の結晶が、しっかりと握られていたのだ。
月光に輝いたあの瞬間が、現実だったことを物語っている。
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隣では裕太が丸くなって眠っていた。
ライチュウも同じように腕の中で丸くなっている。
あれほど騒いでいたのに、今は嘘みたいに幸せそうな寝顔だ。
「ケロ……」
小さな声がした。
視線を落とすと、抱いていたケロマツが目を開き、こちらを見ていた。
昨日の震えはもうなく、体温もすっかり戻っている。
「お、目が覚めたか。もう大丈夫そうだな」
「グレイッ!」
今度は頭の上に重みが落ちた。
グレイシアが飛び乗り、誇らしげに尻尾を振る。
「うおっ……重っ! お前、絶対わざとだろ……!」
「グレイ!」
得意げに鳴くグレイシアに、ケロマツは羨ましそうな目を向けていた。
その視線に、佑真はふと気付く。
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(……こいつ、きっと……)
昨日、雪の隅で震えていた姿が脳裏に浮かぶ。
群れに見放され、居場所を失っていたのかもしれない。
でも――みずタイプのケロマツが、雪山に一匹でいるのは明らかにおかしい。
寒さは天敵のはずだ。
(理由はわからないけど……帰る場所は、もうないんだろうな)
胸の奥に、静かな決意が灯る。
「なあ、ケロマツ」
そっと目線を合わせると、小さな体がピクリと動いた。
「もしよければ……俺たちと一緒に来ないか?
グレイシアとも、きっとすぐ仲良くなれる」
「ケロ……ケロケロッ!」
瞳を輝かせ、嬉しそうに鳴くケロマツ。
その声は、寒い洞窟の中でも不思議と温かかった。
---
新しい仲間が増えた瞬間だった。
グレイシアが誇らしげに「グレイ!」と鳴き、ケロマツの背中を尻尾で優しく撫でる。
裕太はまだ眠っていたが、起きたら驚くだろう。
(……これで、俺たちの旅もまた一歩前進だ)
腕の中の氷の結晶が、朝日を浴びて淡く光った。
それはまるで、これからの未来を照らす小さな灯火のようだった。
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