第25話「ブイズの園へ」
初任務の報告を終え、夜の街を歩いて帰宅した佑真は、自室のベッドに倒れ込んだ。
体の芯まで疲れが染みつき、瞼が重い。それでも頭の中は興奮と不安でいっぱいだった。
(ラティアス……ラティオス……そして、イベルタル……)
目を閉じると、街の上空で暴れ回る赤い竜の姿が鮮明によみがえる。
その背後に現れた、赤黒い閃光と黒い鳥の影――。
「……はぁ」
大きく息を吐くと、足元で「グレイ……」と優しい鳴き声がした。
見上げると、グレイシアが心配そうに顔を覗き込んでいる。
「……ごめんな、心配かけたな」
佑真はグレイシアの頭を撫でる。冷たい毛並みが、不思議と心を落ち着かせた。
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「……よし、ちょっと散歩しようか」
夜風に当たりながら歩いていると、自然と足は郊外へ向かっていた。
思い出すのは幼い頃、イーブイと一緒に遊んだ場所――ブイズの園だ。
森を抜けると、月明かりに照らされた草原が広がる。
そこは柵も囲いもない自然の中にあり、野生のイーブイやその進化系たちが群れで暮らしている秘密の場所だった。
「ブイー!」
「シャワァ!」
「エーイ!」
月明かりの下、さまざまな鳴き声が響く。
イーブイたちが草原を駆け、ブースターが焚き火のような熱を放ち、シャワーズが小さな川で水しぶきを上げている。
リーフィアやエーフィ、ブラッキーの姿も見えた。
「……やっぱり、ここは落ち着くな」
佑真は腰を下ろし、夜風を感じながら群れを眺める。
グレイシアも「グレイ……」と鳴き、かつて自分もこの群れの一員だったことを思い出しているかのようだ。
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ふと、一匹のイーブイが佑真の膝に飛び乗った。
その温もりに、自然と頬が緩む。
「……ありがとう。お前たちに会うと、また頑張れる気がするよ」
隣でグレイシアが静かに寄り添う。
心の奥で重く沈んでいた不安が、少しずつ溶けていくようだった。
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やがて、夜空を見上げた佑真は小さく呟いた。
(俺は……守りたい。グレイシアも、この平和な時間も……)
月明かりに照らされたブイズの群れが、まるで応援するように鳴き声を上げた。
佑真の胸には、次の任務に立ち向かう決意が静かに芽生えていた。
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