第17話「共闘の覚悟」
訓練場に集められた佑真たち新人四人は、神城の前に整列していた。
昨日までの模擬戦とは、明らかに空気が違う。室内の照明は落とされ、緊張感が肌に刺さるようだった。
「ここからは、エンゲージギアの運用訓練だ」
神城の声が低く響く。
昨日の試験で勝負した裕太と総士も、神妙な表情をしている。
「昨日の模擬戦では、あえてエンゲージギアを使わなかった」
「理由は簡単だ。ギアを使う戦闘は――命の危険を伴うからだ」
その言葉に、佑真の喉がごくりと鳴った。
神城は続ける。
「エンゲージギアとは、ポケモンと心を完全に重ね、力を形として武装化するものだ。
つまり――君たちはポケモンと共闘し、人間同士で斬り結ぶことになる」
静寂が訪れた。
頭の中に、剣を握った自分と、敵トレーナーの姿が浮かぶ。
生身の人間と戦う――それはゲームや公式戦とは、まったく違う現実だった。
「もちろん、ポケモンはポケモン同士で戦う。だがギアを扱うトレーナー同士は、人と人で戦うことになる。
躊躇すれば、命を落とす可能性もある」
「……そんなに……」
佑真は思わず声を漏らす。横で綾杜が静かに頷いた。
「だからこそ、息を合わせることが絶対条件なんだ。
ポケモンと心を通わせ、攻防のタイミングを合わせなければ、自分もポケモンも守れない」
神城が手を叩くと、壁のパネルが開き、いくつかの模擬武装が搬入される。
ハープ、チャクラム、雷の槍、そして氷の短剣――新人たちのエンゲージギアを模した訓練用のものだ。
「まずは基本動作を学ぶ。ギアはお前たちの意思とポケモンの心でしか真価を発揮しない。
昨日の髙野の例を見ただろう」
皆の視線が集まる。
裕太が腕を組んでにやりと笑った。
「いやー、あの氷の剣、すげぇカッコよかったな。けど、あれを実戦で維持するのは大変だぜ」
総士が冷静に付け加える。
「一瞬の迷いでも、ギアは消える。呼吸を合わせる訓練が肝心だ」
神城は頷くと、指を弾いた。
「では――訓練開始だ。
髙野、グレイシアと共に、まずは基本の共闘動作をやってみろ」
「はいっ!」
深呼吸して前に出る。
隣でグレイシアが静かに構える。「グレイ……」
――守る。
――絶対に、共に生き残る。
胸の奥に熱が宿り、右腕に氷の粒子が集まっていく。
白銀の短剣が、ゆっくりと形を成した。
「……よし、いける」
「次は動きながらだ。グレイシアと息を合わせろ!」
神城の号令が飛ぶ。
佑真は短剣を握り、グレイシアと同時にフィールドを駆け出した。
人とポケモン、二つの影が完全に重なる瞬間――本当の共闘が始まった。
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