第16話「新たな仲間たち」


 オルディナス機関の入隊式は、静かで荘厳だった。

 白を基調としたホールに立つ佑真の前で、カルネが微笑む。


「改めて、ようこそオルディナス機関へ。髙野佑真くん」


 グレイシアが小さく「グレイ」と鳴くと、カルネは優しく頷いた。


「ここであなたは、本当の意味での仲間と出会い、力を磨くことになるでしょう」


 その言葉を合図に、横の扉が開く。

 そこから現れたのは、既に所属していた同期メンバーたちだった。



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🌸 新川綾杜(しんかわ あやと)


 最初に一歩前に出たのは、端正な顔立ちの少年だった。

 足元には優雅なニンフィア、背後には気配を消すようにサーナイトが立っている。


「改めて、自己紹介をしようか。僕は新川綾杜。フェアリータイプ専門だよ」

 微笑む声は柔らかく、まるで詩を奏でるようだ。


「僕のエンゲージギアは、ハープ型のフェアリーコード。旋律で仲間を支援したり、敵を惑わせることができる」

「君の氷の旋律とも、そのうち重ねてみたいな」


 優雅に一礼する綾杜に、佑真は思わず背筋を伸ばした。



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🌿 池谷総士(いけたに そうし)


 次に歩み出たのは、緑の髪を揺らす物静かな少年。

 横には凛々しいジュカインと、のんびりした表情のミルタンクが並んでいる。


「俺は池谷総士。くさタイプを中心に扱う」


 落ち着いた声に、妙な安心感があった。


「エンゲージギアはチャクラム型・リーフブレードリング。葉っぱのリズムで敵を切り裂くんだ」

 ミルタンクが「モー」と鳴くと、総士は肩をすくめる。

「こいつは癒やし担当。疲れたら撫でるといい」


 地味にありがたい情報だ、と佑真は思った。



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⚡ 大橋裕太(おおはし ゆうた)


 最後に現れたのは、明るい笑みを浮かべた少年だった。

 右にはデンリュウ、肩にはライチュウが乗っている。


「俺は大橋裕太! でんきタイプ専門だ!」


 勢いよく手を挙げると、肩のライチュウが「ライッ!」と鳴いた。


「エンゲージギアは稲妻槍(ライトニング・ランス)! 突撃も遠距離もお手のもんだ!」

「この前は負けたけど、次は本気でいくぜ!」



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 三人が一通り自己紹介を終え、カルネが改めて口を開く。


「あなたたちは、これから同じ部門で訓練を積み、ノクス団の脅威に立ち向かうことになります」


「ノクス団……」


 佑真の胸に、あの路地裏の光景がよみがえる。

 暴走するポケモン、黒い力を纏ったトレーナー。


「彼らが使うのはアークエンゲージギア。絆を無視し、力を強制的に引き出す禁忌の技術です」


 カルネの瞳がわずかに鋭くなる。


「あなたたちの力は、本物の“心と絆の証”。その違いを示す戦いが、これから始まります」


 静かな宣言に、佑真はグレイシアと目を合わせて頷いた。

 ここからが、本当の物語の始まりだった。




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