第14話「選ばれし者の証」


 氷と雷、そして緑の光が交錯する訓練場。佑真は息を荒げながら、グレイシアと背中合わせに立っていた。


「はぁ……はぁ……くそ……二対一は……キツいな」


「グレイ……!」


 正面には池谷総士のジュカイン。枝の上を音もなく跳ね、鋭いリーフブレードを構える。

 左には大橋裕太のデンリュウ。全身に電気を纏い、今にも雷撃を放ちそうだ。


「さぁ、新入り。どこまで耐えられる?」裕太がにやりと笑う。

「……覚悟しろ。葉っぱも雷も遠慮なく行くぞ」総士の声は静かだが、研ぎ澄まされている。


 次の瞬間、ジュカインが枝を蹴り、音速で迫った。


「グレイシア、回避っ!」


「グレイッ!」


 白銀の体が地面を滑るように飛び、リーフブレードを紙一重で避ける。しかし直後、頭上に眩い光。


「デンリュウ、かみなり!」


 雷鳴が落ち、爆ぜた衝撃で佑真は思わず目を閉じる。

 視界が開いたとき、グレイシアが必死に踏ん張っていた。


「グレイ……ッ!」


(くそ……このままじゃ……!)


 負けられない。ここで倒れたら、グレイシアを危険にさらしてしまう。

 その瞬間、胸の奥に熱が灯る感覚が走った。


 ――守りたい。

 ――俺は、この子を絶対に守るんだ……!


 右腕に、冷たい光が集まる。氷の粒子が形を取り、短剣のような氷の刃が生まれた。


「これが……!」


「グレイッ!」


 グレイシアが鳴き、佑真の意志に呼応する。体の奥から、氷の力が全身に巡るような感覚。


「行くぞ、グレイシア! れいとうビーム、正面突破だ!」


「グレイアアアッ!」


 氷の光線が一直線に走り、ジュカインの動きを封じる。デンリュウが雷撃で迎え撃つが、佑真は氷の短剣を振るい、雷と冷気が衝突。轟音とともに蒸気が立ち上った。


「今だ、決めろ! ふぶきッ!」


 グレイシアの咆哮とともに、嵐のような吹雪がフィールドを覆う。白銀の世界に閉ざされ、デンリュウとジュカインは一斉に動きを止め、膝をついた。


「勝者、髙野佑真!」神城の声が響く。


 静まり返る訓練場に、綾杜の拍手だけがゆっくり響いた。


「……見事だよ、佑真くん。心と氷が、きれいに響いていた」


 神城が歩み寄り、静かに告げる。


「本日をもって、お前は正式に――オルディナス機関の一員だ」


 佑真は深く息を吐き、グレイシアと目を合わせた。


「……これからも、よろしくな、グレイシア」


「グレイ!」


 氷の短剣は霧散していたが、その温もりだけは確かに心に残っていた。




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