第13話「氷の共鳴」
冷気と葉嵐がぶつかり合い、視界が白と緑に染まった。佑真は霧の中、必死に次の手を考える。
「グレイシア、左に回り込んで! れいとうビームでジュカインを牽制!」
「グレイ!」
氷の光が霧を裂き、ジュカインの足元に凍結が走る。しかし総士は冷静だった。
「ジャンプだ、ジュカイン」
緑の影が軽やかに宙を舞い、氷を踏まずに着地する。その瞬間、背後から雷光が迫る。
「しまっ……!」
「グレイシア、回避っ!」
グレイシアはぎりぎりで飛び退く。だが電撃は地面に落ち、爆ぜた衝撃でバランスを崩した。
「今だ、クロスアタック!」
裕太と総士の声が重なる。ジュカインとデンリュウが、左右から同時に襲いかかる。
――間に合わない。
そう思った瞬間、佑真の胸の奥が熱くなった。脳裏に浮かぶのは、幼い日の雪山と、あの伝説のポケモン・キュレムの姿。
(守りたい……グレイシアを……!)
次の瞬間、彼の右腕が淡く光った。
氷の粒子が腕に集まり、短剣のような形を作る。
「え……これ……?」
「グレイッ!」
グレイシアが鳴き、佑真と同じ方向に目を向けた。視界が研ぎ澄まされ、敵の動きがゆっくりに見える。
「行ける……!」
反射的に右腕を振るうと、氷の剣から放たれた冷気がジュカインの進路を塞いだ。ジュカインが一瞬怯み、デンリュウの突進も止まる。
「な、今の……!?」裕太が目を見開く。
霧の中で、神城の低い声が響いた。
「……やはり、適性は本物か」
佑真自身も、自分の手元を見つめる。氷の刃は数秒で溶けるように消えた。
(これが……エンゲージギア……?)
胸の鼓動が早くなる。しかし、戦いはまだ終わっていない。霧の奥で、総士と裕太の声が再び重なる。
「まだ終わりじゃないぞ、新入り!」
「グレイシア、構えろ!」
「グレイ!」
氷と雷と緑の光が、再び訓練場で交錯する――。
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