第12話「試される絆」


 静かな訓練場に、金属音が反響する。神城が片手を上げた。


「これより模擬戦を開始する。髙野佑真、お前のエンゲージ適性を確認する」


「……あの、神城さん!」


 思わず声を上げた。胸の奥に渦巻く疑問を、もう抑えきれなかった。


「エンゲージ適性って……いったい、何なんですか?」


 その言葉に、周囲の仲間たちが一瞬視線を交わす。先に口を開いたのは綾杜だった。


「簡単に言うとね、ポケモンの力を一時的に“共鳴”させて、武装として顕現できる素質のことだよ」

 ニンフィアが彼の足元で「ニン」と鳴く。

「心の絆が深いほど、強い力を引き出せる。僕はニンフィアと響かせて、ハープを作り出すんだ」


 総士が淡々と続ける。


「簡単に言えば、“ポケモンと一体になれるかどうか”ってことだな。俺はジュカインと共鳴して、チャクラムを操る」


 最後に裕太が、楽しそうに笑った。


「まあ、要するにかっこよく言ってるけどさ。ポケモンと本気で心通わせたやつだけが、エンゲージギアを出せるんだよ。俺はライチュウと雷の槍を出せるぜ」


「……武器、になるのか……」


 佑真は思わずグレイシアの顔を見た。氷の瞳が、真っ直ぐに彼を映している。


「グレイ……!」


(俺たちも……いつか)


「説明は終わりだ。模擬戦、始め!」


 神城の声が響き、フィールドが光に包まれる。瞬きの後、そこは森と岩場が入り混じった広い訓練地になっていた。


「デンリュウ、いくぞ!」


「ジュカイン、前衛だ」


 裕太と総士が同時にポケモンを繰り出す。雷光を帯びたデンリュウと、音もなく枝に跳ぶジュカイン。


「グレイシア、集中しろ!」


「グレイ!」


 空気が一変した瞬間、ジュカインの影が迫る。


「はやっ……! グレイシア、回避しろ!」


 白銀の体が飛び退くと同時に、地面に鋭いリーフブレードが突き刺さる。続けざまに、上空からデンリュウの雷撃が落ちた。


「グレイシア、右に飛んで! れいとうビームで反撃!」


「グレイィ!」


 氷の光線がデンリュウに向かうが、裕太の指示が飛ぶ。


「電磁波、カウンターだ!」


 青白い電撃が氷をはじき、霧のような蒸気が立ちこめる。視界が曇る中、総士の声が響いた。


「今だ、ジュカイン! かげぶんしんからのリーフストーム!」


 風と葉が渦を巻く。佑真は叫んだ。


「グレイシア、ふぶきで押し返せ!」


「グレイアアアッ!」


 冷気と葉嵐がぶつかり、霧が弾ける。視界が開けた瞬間、二対一の不利がはっきりと現れた。


(くそ……でも、負けられない!)


 グレイシアが低く身構え、次の一手を待つ。

 ――模擬戦は、まだ始まったばかりだ。




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