第11話「選ばれし者たち」
金属の床に、足音が響いた。
目の前に広がるのは、カロスの地中深くに築かれた巨大な訓練施設――オルディナス機関の内部。高野佑真はその冷たい空気に、ほんの少し身を震わせた。
「……ここが、正式な入り口……」
10話で神城に手渡された黒い封筒――それに記されていた場所だ。
封筒にはこう書かれていた。
> 『明日正午、ミアレ市第七区画地下施設。黒い扉の奥へ。君の力を見せてもらう』
言葉の意味がわからないまま、佑真はここに来た。そして今――重厚な扉が音を立てて開く。
「ようこそ、適性試験会場へ」
現れたのは、白衣姿の青年。だがその背後から、見慣れた顔が次々に現れる。
「よぉ、来たな佑真。意外と早かったじゃん」
大橋裕太。口元に自信たっぷりの笑みを浮かべた、電気タイプの使い手だ。右手には黄色く光るチャクラム――雷輪刃(サンダーリング)が揺れていた。
「……え、裕太……どうしてここに?」
「もう入ってるに決まってんだろ、俺も」
その隣から現れたのは、静かな瞳をした少年――池谷総士。両手には緑色の葉が回転するような二重の輪、リーフブレードリングが装着されている。
「試験って言っても、まぁ、お前にはちょっとハードかもな」
「な……二人とも、オルディナスのメンバーだったのか……」
動揺する佑真に、さらにもう一つの影が現れる。
「やぁ、佑真くん」
新川綾杜(しんかわ あやと)。柔らかな声と共に、ニンフィアとサーナイトがその後ろから顔を覗かせた。
「君がここに来るって、ずっと信じてた。あのバトル、素晴らしかったよ。君の“心”が見えた気がしたから」
――まるで詩のような言葉に、佑真は思わず目を逸らす。
「まさか……全員、俺より先に……」
「お前は遅れて来た新入りだよ、髙野佑真」
後方から響く低い声。神城だ。
「この機関に入るには、“エンゲージ適性”と“共鳴率”の両方が重要だ。君のグレイシアとの関係性は……我々の中でも注目されていた」
神城の視線が、佑真の肩に乗るグレイシアへと向かう。グレイシアは鋭く鳴いた。
「グレイ!」
その声に応じて、佑真も前を向く。心の中に――かつてキュレムと出会ったあの雪山の記憶が蘇る。
――あのとき、グレイシアは何も言わずに俺を守ってくれた。
だから俺も、ここで――
「適性試験、受けさせてください!」
叫んだその声に、周囲が一瞬ざわめく。
「いい目をしてる。なら、最初の試験は――」
神城が腕を上げる。すると、奥の扉が開き、薄暗い空間が現れた。
「バトル形式だ。パートナーポケモンとともに、“適性ペア”と戦ってもらう。相手は――」
神城が顎で合図する。
「俺と、総士だ」
大橋裕太と池谷総士が、ニヤリと笑った。
「よろしくな、新入り」
「葉っぱと雷の嵐、楽しんでくれよ」
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