第10話「黒の招待状」
放課後。静まり返った教室の隅で、佑真は一人、今日のバトルの反省をしていた。ニンフィアとの戦いでの敗北――グレイシアの誇りも、自分自身の未熟さも、どちらも痛感する一戦だった。
「……やっぱり、俺はまだまだだな」
グレイシアがそっと「グレイ」と鳴いて寄り添う。その毛並みは冷たいけれど、どこか安心感がある。
そのとき、誰もいないはずの教室のドアが開いた。
「お前、少し時間あるか?」
振り返ると、そこにはスーツ姿の男――神城の姿があった。冷たい瞳と、どこか圧を感じる雰囲気。彼が近づいてきたとき、佑真の胸ポケットにしまっていた黒い封筒が、ひとりでに熱を持った気がした。
「……あのときの手紙……」
神城はゆっくりとうなずいた。
「今日のバトル、上からも映像を確認させてもらった。グレイシアの反応、君の指示。特筆すべき点が多かった。正直、想定以上だったよ」
佑真は戸惑いながら問いかける。
「な、なんの話ですか?」
「言っただろ。君に“素質”があるかもしれないと」
神城は封筒を指さした。
「その中にある場所に、今夜来てくれ。そこで話す。……来るか来ないかは、君の自由だ」
そう言い残すと、神城は教室から立ち去った。
佑真は残された封筒を見つめる。そこには見慣れない地図と、座標が書かれていた。時計を見ると、もうすぐ日が暮れる時間だった。
「……行こう、グレイシア」
「グレイ」
黒い手紙が導く場所で、運命は大きく動き出す――。
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