ぼくととうめいなおんなのこのおはなし

桜井真彩

第1話 ぼくととうめいなおんなのこのおはなし

いつもすみっこで泣いている女の子。

こんなに泣いているのに誰も声をかけない。

ほくはほうっておけなくて声をかけた。


「キミにあたしが見えるの?」

女の子はおどろいたように目を見開く。

「どうしてきみは泣いているの?」

「だれもあたしに気づいてくれないから。いろんな人に声をかけたのに…」

「どうして誰も君に声をかけないの?」

「あたしはこの世界のものじゃないの。この世界に居ちゃいけないから」

女の子は消え入りそうな声で言った。


「ぼくのパパが言っていたけど、必要のない人はどこにもいないんだよ!」

そういうと女の子は泣きそうな顔で笑ってぼくのほうに手を伸ばす。

女の子の手がぼくの腕をすり抜けていく…。

「これでわかったでしょ?あたしはこの世界に居ちゃいけないの、でもここでない場所に行けないの」

目に涙をいっぱいためて言う。

「じゃあ、これからぼくと探検しよう!ぼくの秘密基地に連れて行ってあげる!」


ぼくだけの秘密基地に女の子を連れて行った。

ここはとても見晴らしがよくて、たまに夜中にこっそり星を見に来るんだ。

なにをしてあげたらいいかわからないけど、きれいな景色を見たら元気になると思うんだ。


「ついたよ、ここがぼくの秘密基地。気に入った?」

「うん!とっても」

そう言って女の子がニッコリ笑う。

ぼくは少しだけ照れ臭くなって、そっぽを向いた。


それから女の子とかくれんぼをしたり、おいかけっこをしたりして遊んだ。

女の子はとてもかくれんぼがうまくて、空を飛べるからおいかけっこも早くて僕ばかり鬼になった。

ちょっとだけずるいと思ったけど、女の子がうれしそうに笑うからぼくもうれしくなった。


楽しい時間はあっという間に過ぎて、あたりはすっかり夕焼け色に染まっていく。

「今日は素敵なところに連れてきてくれて、いっぱいあそんでくれてありがとう」

女の子が少しずつ夕焼け色に溶けていく。

「え…どこにいくの?もっとぼくと遊ぼうよ」

「キミのおかげでちゃんと次の場所に行けるよ。ありがとう、さようなら…。キミがこれからずっと幸せでありますように」

女の子はニッコリ笑ってすぅっと消えてしまった。

ぼくはちょっとだけ泣いた。

今日のゆうやけはいつもよりまぶしかったんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼくととうめいなおんなのこのおはなし 桜井真彩 @minimaa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る