第34話:カナンの地、ジョージアに在り
1941年年度初め、ある画期的な軍縮条約が発布された。その内容は以下の通り。
・日米英独仏伊はそれぞれ5:5:5:3:4:2の軍事力を以て列強として取り扱う
・ロシアを初めとしたそれ以外の国家は、原則公使へとランクを落とすものとする
・尚、軍事力を測る物差しは軍事予算と兵隊の頭数であり、六カ国は軍事技術を合同で保有するものとする
・軍事力1点の計算基準は、後に条約合議で取り決める
・列強諸国は、植民地の保有を禁じる(ただし、国防上やむを得ぬ場合および公使国が覇権を取ろうとした場合への措置はその限りではない)
・列強六カ国は国際連盟協同軍をその割合予算分割り当て、国際平和のための協同軍事組織を作り上げるものとする
・今後、特に指定が無い場合、国連欧州本部はイスタンブール、国連アジア本部は新京とする
これの何が画期的なのか判らないと言う方もいるかもしれないが、これは事実上アメリカ合衆国の軍事力を縛り付ける行為であった。だが、発案者はなんとアメリカ合衆国であった。フーバーは本気で国際平和のための軍縮条約を作るつもりだったのか、あるいは進捗著しいドイツ第三帝国を警戒してのものだったのか、それとも日本が対英米7割のことを考えていたことを考慮してか、その点においては大幅譲歩したものであった。
だが、フーバーのこの配慮は後に思いも寄らぬ福音を生むことになる……。
ソビエト連邦が解体処分となったのは記憶に新しいが、その結果このシベリアの地には大小様々な泡沫国家が発生した。その中でも特徴的なのが、旧グルジアに出来た通称は「カナン共和国」である。名前の由来は言うまでも無い、ユダヤ人国家はそこにすると国連協議の結果決まったようだ。
無論、そこはパレスチナではない以上、不服を唱えるユダヤ人も存在したが、まずは現状から比べたら大いなる前進であるが故に、多くのユダヤ人はそれに歓喜した。では、なぜグルジアが選ばれたのか。それは……。
「ミスター・ホリ、この度はパレスチナ叛乱の解決に乗り出して頂き、ありがとうございます」
「いえいえ、日英同盟を堅持する以上、味方の基地で叛乱が起こっては困りますからな」
「しかし、なぜグルジアに?」
「……チェンバレン氏は「ハザール汗国」という国をご存じですか?」
「いえ、私は労働者階級なので故実には詳しくないのですよ」
「……そうですか。タタールの軛より遙か昔にカスピ海近辺で栄えたテュルク人の国家なのですがな、そこはユダヤ人国家だったらしいのですよ」
「ほう、それで」
「ええ。なればまあ、故実にうるさいユダヤ人もそれなら納得すると思いましてな」
「ははは、ミスター・ホリは詳しゅう御座いますな」
「いつも脳で思いつくのはこんなことばかりでしてな、偶には実務的な事も思いつかねば拙いのですが、今回はそれが偶々実を結んだようなもの。それに……」
「それに?」
「グルジアはあのヒゲの故郷ですからな、再びアカが現れんようにユダヤ人で封印するのも、悪いことでは無いでしょう」
……グルジアを初めとしたコーカサスの地には古代、ユダヤ人国家であるハザール汗国が存在していた。そして、グルジアは言うまでもなくヨシフ・ジュガシヴィッリの故郷である。そこを世界の嫌われ者であるユダヤ人が占拠する。それが、大日本帝国なりユダヤ人問題に対する答えであった。
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