第4話 もう付き合っていいよ

学校の廊下を歩きながら、未来は心臓がバクバクしていた。

あの日から、彼と過ごす時間が特別になっていた。


「今日も一緒に帰ろう」

彼からの何気ない一言に、胸が締めつけられる。


でも、まだ正式に「付き合う」って言葉は出せずにいた。

二人の間には、まだはっきり言葉にできない何かがあって、未来はその壁を乗り越えたいと思っていた。



ある日、放課後の教室で二人きりになったとき。

彼が少し照れながら言った。


「未来……俺たち、これからどうする?」


未来は戸惑った。

彼も同じ気持ちだったんだと知って、少し安心した。


「わからないけど……でも、ずっと一緒にいたい」


その言葉に彼が微笑み、少し勇気を出して言った。


「だったら……もう、付き合っていいよね?」


未来の顔が真っ赤になった。

でも、心から頷いた。


「うん、付き合おう」



それから、二人の関係は少しずつ変わっていった。

手をつなぐことが自然になり、笑顔が増えた。


「これからもずっと一緒にいよう」

彼の言葉に、未来は静かにうなずいた。


その瞬間、教室の空気がふっと柔らかくなった。

これまで言葉にできなかった想いが、ようやく形になった瞬間だった。


「じゃあ、初めてのデートはどこに行こうか?」

彼が少し照れくさそうに言う。


未来は照れ笑いを浮かべながらも、胸が高鳴った。


「映画とかカフェとか、ゆっくり話せるところがいいな」


「いいね。君の好きなところに行こう」



その週末、待ち合わせ場所に向かう未来の心臓はドキドキと跳ねていた。

服装を何度もチェックして、何度も深呼吸を繰り返す。


「変じゃないかな?」

未来は鏡の前で自問自答した。


でも、彼に会うことが嬉しくて仕方なかった。



約束のカフェで彼と会うと、彼は少し緊張しながらも優しい笑顔で迎えてくれた。


「今日、すごく楽しみにしてたんだ」

彼の言葉に未来は頬を赤らめた。


二人は注文したコーヒーを飲みながら、好きな音楽や将来の夢の話をした。

時間はあっという間に過ぎていった。



帰り道、並んで歩く二人の手が自然と重なった。

未来の心は温かく、これからの毎日が輝いて見えた。


「これからも、ずっと一緒にいよう」

彼がそっとつぶやく。


未来は笑顔で答えた。


「うん、ずっと」



その日から、二人の関係は少しずつ深まっていった。

笑い合い、励まし合い、時にはケンカもしたけど、どんなときもお互いを大切に思っていた。


未来は、彼と過ごす毎日が何よりも幸せだった。

だけど、幸せな時間が続くほど、心のどこかで不安も芽生えていた。


「私たち、ずっとこのままでいられるのかな…?」


そんな思いがふと胸をよぎる。

彼に言えないまま、未来は夜空を見上げて静かに願った。


「これからも、ずっと一緒にいられますように」



次の日も、二人は変わらず笑い合い、話し合った。

けれど未来は、自分の中の小さな不安とどう向き合うべきか悩んでいた。


そんな彼女を見て、彼はいつもより優しくそっと手を握った。


「何かあったら、全部話してほしい。俺がいるから」


未来は涙をこぼしながら、ようやくその不安を打ち明けた。


「私、時々怖くなるの。あなたが離れていくんじゃないかって…」


彼は強く未来を抱きしめて言った。


「俺は未来だけを見てる。絶対に離さないから」



それから二人は、お互いの不安や弱さも受け入れ合いながら、

もっと深い絆で結ばれていった。


未来は確信していた。

どんな未来が訪れても、彼となら乗り越えられると。

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