ー2章ー 11話 「償いの手と、新たな協力者」
【リュウジ】「じゃあ、聞かせてもらおうか。俺を呼んだ理由ってやつ」
リュウジは腰に手を当てながら、真っ直ぐゴブリンキングを見つめた。
焚き火のかすかな炎が、辺りの壁にゆらゆらと影を揺らめかせる。
岩肌の冷たさが背中に伝わる静寂の中、重く低い声。
少し呼吸を整えたゴブリンキングは、乾いた唇をゆっくりと開いた。
【ゴブリンキング】「私は……数日前から、強大な気配を感じていた。恐らく、ドラゴンのものだ。しかも……かなり近くに」
リュウジは内心で「あぁ、やっぱりな」と頷いた。
胸元のネックレス――ドラゴンの加護が宿る緑の雫型の宝石。
これはやはり、魔物たちにとっては異質な存在感を放っているらしい。
【ゴブリンキング】「そんな折、若い者たちが“村”を襲ってしまった。私は……止められなかった……。しかも、帰ってきた若者から聞かされたのは、ドラゴンではなく“人間”だったと……」
【リュウジ】「……それ、俺だな」
素直に肯定するリュウジの声に、ゴブリンキングは沈黙を挟んでから、静かに言葉を続けた。
【ゴブリンキング】「……ドラゴンが人間に加護を与える。そんなことがあるのかと最初は疑った。だが、その証を見て……私は悟った。あなたは……“あの存在”と同等の力を持つ者なのだと」
リュウジは黙って胸元のネックレスを手に取り、そっと掲げた。
緑色の宝石が、仄かに柔らかな光を放つ。
【ゴブリンキング】「……この地は、かつては深き森でした。動物も豊かに暮らし、我らも平穏の中にあった。だが、北西――あの方角に“ロックゴーレム”が現れ、森を割ったのです」
【リュウジ】「森を……割った?」
【ゴブリンキング】「そうです。まるで大地を引き裂くように……岩壁が築かれ、森の命脈を分断した。水脈は閉ざされ、木々は枯れ、やがて動物たちも姿を消しました。我らは、生きる術を徐々に失っていったのです。あなたであれば、きっと……この現状に耳を傾けてくれる。そう信じて、無礼を承知でお呼びしたのです」
長い話を終え、キングは静かに頭を垂れた。
リュウジはしばらく沈黙し、深く息を吐いてから言葉を繋ぐ。
【リュウジ】「……事情はよく分かった。でもな、キング。あの村の人たちは、お前らに理由もなく襲われ、家畜を失い、恐怖を刻まれた。それは事実だ」
ゴブリンキングは深く目を閉じ、悔しげに唇を噛んだ。
【ゴブリンキング】「……その件については、全面的に我らの非。我が一族、如何なる裁きにも従う覚悟でございます」
【リュウジ】「裁きってほどじゃないけどさ……だったら、俺からひとつ提案がある」
その一言に、ゴブリンキングが顔を上げる。リュウジの眼差しは、真剣で、どこまでもまっすぐだった。
【リュウジ】「襲ったホノエ村の復興――お前たちも手伝ってくれ!それが償いだ。そして、人間と一緒にこの地で生きていこう。すぐには無理でも、時間が経てば……きっと分かり合えるはずだ」
しばらくの沈黙ののち、ゴブリンキングは目を細め、静かに手を差し出した。
【ゴブリンキング】「……それが我らの罪を償う道であるならば、喜んで」
その手を、リュウジは力強く握り返した。
ごつごつとした、しかし温かなその手に、新たな信頼が生まれた。
【リュウジ】「よし、じゃあ、まずは焼きイモパーティーからだな。腹が減っては復興できないからな!」
【ゴブリンキング】「イモ……昨日頂いた、あの食べ物ですね?」
【リュウジ】「ああ。あとで驚け!イモの本当に凄いのはこれからだ!食べ方だって一つや二つじゃないんだぞ!?」
リュウジのイモ談議が暫く続いた。
――こうして、ホノエ村に新たな協力者が誕生した。
物語はまたひとつ、静かに進んでいく。
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