ヒロイン② 黒髪清楚な美少女 ~鍵開け、密着した胸のドキドキ~

 //SE 風鈴の音、遠くで海猫の鳴く声。波の音


波音はのん、久しぶりにお兄ちゃんの鍵開けを見てみたいな……」//甘えるように


 「……しばらく会わないあいだに背がすっごく伸びたんだね。……私が今日履いているぺたんこな靴だと、お兄ちゃんの肩までしか背が届かなくなっちゃったね」


「ほら、頑張って背伸びしたら、お兄ちゃんの顔の横まで届いたよ」//耳もとで甘くささやく


 //SE 少しずつ高まるお互いの心音


(照れて話題をすりかえる)


「もうっ、お兄ちゃんの意地悪!! なんの鍵を開けるか最初から分かってるくせに……」


「どれだけ恥ずかしいを言わせるつもりなの。私のハートの鍵は、とっくの昔からあなたの手で開錠済みなんだから。ほら、その証拠に私の心臓の音、こんなにドキドキしてるから手首に触ってみて……」


 //SE 高まるお互いの心音 衣擦れの音


 「わかるかな、私の胸、すごいドキドキしてるよ。十六年間生きてきて、最大級なドキドキかも。……触れた身体越しに、お兄ちゃんには筒抜けで聞こえちゃうよね」


「ふぅ……はぁ……はぁ。何だか身体が熱い」


 「んっ……ふぅ……ふぅ……」波音の息使いも更に激しくなる


「……ふぅ……ふぅ。お兄ちゃんの胸もドキドキしてる。波音と一緒で良かったぁ」


 //SE さらに高まるお互いの心音。激しい衣擦れの音


「はぁはぁっ、今日の私、変な感じかも。胸のドキドキだけじゃなく、身体も熱いの……」 


「……ねえ、お兄ちゃん、私のほっぺた、赤くなってないかな?  ええっ、頬どころか耳の先まで真っ赤だって!?」


「ううっ、めちゃくちゃ恥ずかしいよぉ……」//切なげに


(頬が真っ赤な波音を、熱中症だと勘違いして心配をするお兄ちゃん)


「もうっ!! 熱中症じゃないから。本当にお兄ちゃんったら、昔から女の子の気持ちにだけは鈍感なんだから。……中に入ってからこんなに私をドキドキさせた責任、ちゃんと最後まで取ってもらいますからね。そこんとこ覚悟しなさい!!」//恥ずかしさを隠す強がりな口調


 //SE さらに高鳴るお互いの胸の鼓動


「んっ、はあっ……」//大きく深呼吸


「……ふうっ、はあっ、落ち着け、私」


 //SE 心音が少しずつ落ち着いてくる


「はあっ、やっと胸のドキドキが収まった。えへへ、最初からお気持ち全開で、私ったらお子様みたいだよね」


「えっ、しばらく会わない間に、キャラが変わったんじゃないかって。 さっきの告白だって、大人しい波音から、グイグイくるボーイッシュ風な女の子になっていたのは、なぜって?」


「べ、別に!! 久しぶりに会えたからテンションが爆上がりしてただけだよ……」//しどろもどろにごまかす


「ええっ、もうひとつ私に聞きたいことがあるの!?」//不安げな声


「最寄り駅のホームで見かけた広告のポスター。そ、それがどうかしたの?」


 //SE ドキッ!! ドキドキ!! という感じで鼓動が次第に高まる


「私とそっくりな女の子が駅の広告で微笑んでいたって。……それってもしかして、冬に公開予定の新作映画で、事前告知のポスターじゃない?」


 //SE どんどん早くなる胸の鼓動


「なんで波音は、広告のポスターって言っただけで、映画の宣伝だと言い当てるのか、って?」


「そ、それについては、え、え~っと」//挙動不審な感じ


「……」


 //SE 胸の鼓動 次第にフェードアウト


「……いまはまだ秘密にしておこうかな。お兄ちゃんとはお泊りでゆっくりとお話しできるから。それより早く中に入ろうよ。鍵開けをお願いね」//小声でささやくように悪戯っぽく。


 //SE ガチャガチャと鍵を回す金属音 数回繰り返す


「……お兄ちゃんの手って、おっきいな。やっぱり会わないうちに成長してるんだよね。あたりまえなのに私、なんでこんなに動揺してるんだろう。嬉しいみたいな、胸が苦しいような不思議な気持ち」// 先ほどとは打って変わり、不安を押し殺すような感じで


 //SE ガチャリと軽い音を立てて玄関の鍵が開く 重ねた手を離す音 衣擦れの音


「開いた!!」


 //SE 重い扉の開閉音に続いて玄関内に移動する二人の足音


「ほら、昔のままで驚いたでしょ。玄関だけじゃないよ。リビングも二階の部屋も当時のままで残してあるの」


「リビングからの景色もそのまんまだよ。……お兄ちゃんと一緒によく海を眺めていたよね」


「さあ、お兄ちゃん、早く中に入ろ。 ……ええっ、いきなりどうしたの!?」


 //SE 身体を強く抱きしめられ、衣服が擦れる音。鍵が床に落ちる音


「……お、お兄ちゃん」//固唾を飲みこむ


 //SE 再び高まる心音。重なって聞こえる


「……私だって寂しかったんだよ。あなたを忘れた日は一日だってなかった。カレンダーにしるしをつけて、指折りかぞえて。帰国する日をどれほど待ちわびたかわからない」


 //SE そっと手に触れる 衣擦れの音が大きくなる


「優しく頭をなでてくれた手のひらだけじゃないの。よく陽に焼けた笑顔。はにかむように笑う癖。……昔と全然変わってない。今だってお兄ちゃんのすべてが好き!! 」//抑えていた感情が一気に溢れ出す。


「はあっ……」//必死に気持ちを整える


「私ね。ずっと考えてたんだよ。お兄ちゃんと会えたら何を話そうかって。……でもおかしいよね。あなたの顔を見たら、あまりにも想いがあふれすぎて、まったく言葉が出てこないの」


「……」//お互いを見つめ合う


「お兄ちゃん、お願い。このまま私の身体を抱きしめて。逢えなかった空白の時間をすべて埋めるくらいに強く」//抱きしめた腕の中、耳もとに聞こえる切なげな声


「限られた数日間を、この場所で過ごす前に……」


「大好きだよ、お兄ちゃん……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る