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「今日は勝ッチの為にお弁当作って持って来たよ♪」


「えっ⁉弁当⁉」


 唐突に綺羅星さんが僕の為にお弁当を作って来たので困惑した。交流を始めてから一週間、勿論付き合っているというわけではない。


「うん、だって勝ッチっていつもコンビニ弁当なんだもん。そんなんじゃ体壊すよ」


 確かに僕の家は母親が忙しい人なので、いつもコンビニ弁当なのだが、まさかそこを気遣ってお弁当を作って来てくれたと言うのだろうか?そんなことをしてくれる女子のが居るのだろうか?

 この様子を見ていた、教室に居る生徒達はチラチラと僕らの方を見ている。そりゃ気になるよな、こんな可愛いギャルが僕みたいな冴えないオタクの為にお弁当を作って来てくれるなんて、本当なら天と地がひっくり返ってもあり得ないことだ。こうなって来ると何か裏があるんじゃないかと思ってしまうのが人間だが、綺羅星さんの澄み切った純真無垢そうな瞳を前にして、彼女を疑う自分の心の小ささに嫌気が差して軽く自己嫌悪に陥った。


「どうした食べないの?あっ、もしかして人が作ったものは食べれない系男子?」


「い、いえいえそんなことは、食べれます、食べれますとも、ありがたくいただきます」


 こうなれば毒が入って行用が食べる次第である。可愛い女の子が作ったお弁当を食べて死ぬのなら本望だ。

 そう思って綺羅星さんの弁当箱の蓋を開けると、そこには弁当のフタの形に変形した大盛りのご飯、鶏のから揚げ、厚焼き玉子、ソーセージといった、おそらく嫌いな奴がほとんど居ないような弁当がそこにあった。


「あっ、味噌汁とサラダは別に作ってあるから、ちょい待ち」


 そう言うと綺羅星さんはサラダが入った小さいタッパと水筒を取り出し、水筒のコップに味噌汁を注ぎ始めた。いやいや、そこまでする?もしかして彼女にだけ僕のことが吉沢 亮にでも見えているのだろうか?僕はあんなイケメンじゃないし、拳法を使う惑星を模した仮面ライダーにもなった覚えはない。


「はい、お待ち♪あっ、サラダから食べた方が体には良さげだから、サラダから食べなよ♪」


「何から何まですいません」


 綺羅星さんが褐色のギャル天使に見えてきた。どうして天使なのに翼が生えて無いのだろう?きっと天界に降り立つ時に神様から取られてしまったんだろうな。

 なんてアホみたいな妄想をしつつ、僕はサラダを食べた後に、卵焼きを掴んで持ち上げた。少し焦げている様だが、それすらも手作り感があって嬉しい限りだ。


「あっ、それ、ちょっと失敗しちゃってさ、兄貴の作り方真似て作ったんだけど、やっぱり難しかったんだよね」


 バツの悪そうな顔をする綺羅星さん。そんな顔をする必要は無い。すでに僕は幸せのオーバーキルを喰らっているのだから。

 僕は卵焼きを食べて、すぐにこう言った。


「美味しいです、焦げてるから余計に美味しいです」


「マジか⁉焦げってた方が旨いのか⁉」


 そんなことは無いと思うが、美味しいのは本当である。それにしても綺羅星さんがオタクに優し過ぎるのだが、何か理由があるのだろうか?




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