途中駅
高黄森哉
途中駅
二人の男女がいる。彼らは、結ばれないか結ばれる運命にある(この地上にその関係にないペアは、実をいうといないのだが)。さて、その2つの間は紙一重であり、しかし、その微妙さはどの縁にも共通しているといえる。
二人は今、別々の場所にいる。
少年は茹だるような熱波をぬけ、電車に揺られているところだ。彼は、今日まさに、運命の人に出会うか出会わないかの縁に揺れているのだが、そのことを露もしらない。ただ、携帯の充電が切れ、手持ち無沙汰なので、電車の回す淡い走馬灯を、車窓というのぞき穴から見つめている。
少女は本を読んでいる。今の時代、文学少女とは珍しい。実際、彼女の周りは皆、老若男女とわず、スマートフォンを見つめている。嗚呼、このような時代で人はどのようにして繋がりを持つのだろう。と、彼女は憂鬱になった。車内は混んでおり、すべてが商業臭く、そして卑しく思えた。
この時点で二人の乗る電車は、それぞれ真逆の方向へ走っている。
少年は、今日が嫌にパステルがかっているのを不審に思った。まるで、今日という日がたちどころに思い出になりつつある感じだ。それは、気まぐれに早起きをして、一本前の電車に乗っているからかもしれない。それは、ここがすでに彼の走馬灯であるからかもしれない。目的地へ到着する。
少女は倦怠感の中、本を読むのをやめた。体調が優れない。なんだか、今日は決して面白い日になりそうにない。彼女は、少年特有の万能感から、そう信じてやまなかった。年齢にかかわらず、彼女は決めつけ癖があるようだ。電車は駅に到着する。
それで、ならば二人は結ばれなかったのかい? なあに心配することはない。二人の電車は確かに、真逆の方向へ進んでいた。しかし、二人の目的地は、二人の間にあったのである。
途中駅 高黄森哉 @kamikawa2001
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