私が物語を綴り始めたときは、人間関係がないことに苦しんでいたが、今では人間関係に苦しんでいる。結局ないものねだりだったのかもしれない。それでも、ないよりかはマシなのだが。自ら孤独になったのに、孤独が長すぎて、なぜ孤独になったか忘れた男である。今日、「ポンペイの予知夢」を読み返してみて、あまりの不出来さに後半セクション以外を消してしまった。もともと後半だけの作品だったからこれでいいのである。ずいぶんよくなった。
消す作業をしている際に、ふとこの作品が最古の短編であることを思い出した。短編は練習が目的であったはずだが、いつの間にかメインになってしまったらしい。なんの練習かというと、長編の練習。というのも、もともと大学時代に長編をセラピーのために書いていたのである。結局、精神的欠陥は解決せず、社会人の初め、170km/h で鹿と新しい粒子を探しに行く羽目になった。努力むなしく、鹿は全損して帰らぬモノとなり、車は心臓を止めその短い生涯を終えた。その代わり私はその実験の刹那に、どこにもないものに触るという稀有な体験をした。無論、法である。そして今に至る。