2 黒髪の少女
信心深い
明日は仕事が休みなので、朝から古池公園に行こう。
夜が明けた。古池の水も
私は山田さんを警戒し、居間から
音が鳴らないように、細心の注意をはらって玄関の扉を開けた。いつもなら釣竿を持って出掛けるのだが、今日は手ぶらなので少しばかり居心地が悪い。
門を開けた途端、植込みの
「つッ、おはようございます……」
平静を
「よもや古池に行こうとしているのではあるまいな?」
「いけませんか? たとえ
クギを刺すように言うと、山田さんは
「
山田さんは
「そうですか。気をつけて行って来ます。私には、そこですべき事があるので」
古池の
私は家にあった五十二ミリ径の
私は獲物を
池の中は、様々なもので
「釣竿が見当たらない。黄金の鯉も……」
冬の池の水は冷たい。しかし
私はズボンの
大きく息を吸い込み、息を止めて冷たい水中に頭を
地面はコンクリートの表面に防水加工が
(黄金の鯉はどこだ? いや、順番で行くと釣竿の方が先だ)
私は前日に、ずぶ濡れを回避した事を後悔していた。
「仕方がない。新しい竿を買おう」
自分に言い聞かせるように
その時だった。私をじっと見つめる強烈な視線を感じたのは。情熱とも殺気とも取れる刺すような視線に、私は
少し離れたベンチに、視線の
「私に何か
ベンチの近くまで歩き、少女に
「いえ。
少女は大きな瞳を
私はそれ以上言葉を発する事が出来なかった。不格好な自分に
「釣竿は見つかりましたか?」
私は一瞬耳を
「なぜそれを?」
私は思わず聞き返してしまった。初対面の、
「その犬が昨日の晩に、見ていたのです」
少女がさした指の先に、その犬がいた。
その犬には目が無かった。正確に言うと、
その
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