やる気

白川津 中々

 やりたい事は確かにあるが金も時間もなく、なによりやる気がなかった。


 やりたい事があるのにやる気がないというのは矛盾のように思えるのだが事実そうなのだからそうとしか言えない。ともかく、なにもやりたくないのだ。休日に動こうとしてもつい枕元にあるスマートフォンでショート動画を見ているといつの間か夕方になっている。その間もちろん葛藤はあってせめて外くらい出ようかなとか青空文庫で小説でも読もうかなとか有意義な時間の使い方を考えるも結局何一つとして実行せず、やる事といったら買い置きしておいたジャンクフードや菓子パンを食べたりコーヒーを飲んだりするくらいで一つも実になるような、あるいは生産性のあるような暮らしをしていないのである。日が沈む頃になってようやく頭が動き、「この一日をもっと大切に使えばよかった」と後悔しながら酒を飲むのだ。こんな生活がもう10年続き、今年30になる。生活は相変わらず無駄で面白みのないものだ。10年前、いや5年前にもっとなにかできていたら、人生が豊かになるような経験を詰めていたら、どれだけよかっただろう。


「なにもない……」


 嘆きも虚しく、30歳、透明の中年が完成されていく。もう、これから何をする事もできない。死ぬまで働いて、休日はショート動画を見て朽ちていくだけしか。


 一日が、終わる。何もなく、何もできず。

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