第2話 思い出したぁ!パート2

「思い出したぁ!」

 思わず、大声を上げて僕は勢いよく起き上がった。


 今日は僕の13歳の誕生日。

 半分寝ぼけながら起きようと思ってたその時に突然もの凄い勢いで記憶が思い出されていった。


 やばい、ちょっとしたパニックになってる。

 1回落ち着こう。

 まず、前世の記憶の確認。


 前の僕は78歳まで生きていた。

 こことは違う世界で、どうやら日本って国名だったらしい。

 あ、文字や言葉も思い浮かぶ。


 転生空間の記憶。

 うん、しっかり残ってる。


 どうやら前世の記憶にこの転生空間も含まれているらしい。

 成長率マックス、幸運を3段階、縁というおそらく人との出会いに必要そうな奴を持っている。


 天賦の才は魔法と身体能力と棒術を確保している。


 そして今の俺の記憶。

 世界観的にはいわゆるファンタジーまんまだ。

 技術も制度も中世っぽいし、剣と魔法……は……よっしゃ! 有るって認識になってる!


 そんな世界のカダイの村で、狩人の父親と優しい母親の間に産まれた。

 名前はリュースだ。


 半年ほど前に父親は徴兵されて領主様の元に行った。

 そして3ヶ月前に戦死したとの報告が村に届いた。


 そのショックで母親は倒れ、村長が面倒を見てくれている。

 カダイの村は全員で20名くらいの村というより集落に近い小さな村だ。


 それでも、この世界ではもっと小さい集落でも村と呼ばれ、それらの村を貴族が管理して、それをさらに上の貴族の領主様が統括している。


 2年前に起きた、ここより少し離れた火山での噴火がこの村にまで影響しているせいで、村の農作物は不作でかなり困窮している。


 それなのに俺や母親をこうやって面倒見てくれる村長は本当にありがた……

「ちょっと待てい! どこだここ!」


 目の前は森、背後は絶壁、よく見れば身体のあちこちが傷だらけだ。


 傷を認識したらあちこち痛み出してきた。

 冷静になってきたら、色々思い出してきた。


 昨日の夜中に突然簀巻きにされて、崖の上から放り捨てられた。

 俺は寝てたんじゃなくて気絶してたんだな。


 運良く途中の木などがクッションになって致命的な怪我はしていないが、死んでいてもおかしくない状況だ。


「くっそう、意味わかんねぇ!」


 突然の前世の記憶の復活とあちこちぶつけたショックで混乱していた状況は解消したけど、そもそも何故捨てられたのか全然分からない。


 とりあえず分かる事は前世の記憶とかまったく役に立たない状況って事だ。

 テレビや動画のサバイバル系は良く見ていたが、あれも道具を使う知識であって、道具を作る知識ではない。


 今、俺の手元にあるものは着ている粗末な服だけだ

 あれ? もしかして俺! 既に詰んでる?!


 前々前世くらいに何かした祟りだろうか?

 いやいやいや、冷静に考えてこれがスーパーハードモードのスタートって事なんだろうな。


 記憶が戻った時点からスーパーハードスタートって感じだけど、これ記憶が戻るの0歳にしてたらどうなってたんだろ?


 それから考えたら、まだマシなのか?

 とりあえず、前回の知識は当てにならないから、今回の13年分に知識でなんとかするしかない!


 とは言ってもなぁ、父親は狩人だったから弓の扱い方教えて貰ってたけど作り方までは教えてもらってないしなぁ。

 とりあえず、ここがどこか何か記憶にないかな?


 絶壁の高さは4m前後って所か、2階建ての建物の屋根の上くらいが確かそれくらいだったから体感的にだいたい合ってると思う。


 ロッククライミングできる人なら登れるかもって高さだけど、もちろんそんな経験も知識もない。

 目の前の森は……ん?

 あ、あの若干紫がかった独特な色の草は……正式な名前は知らないが俺たちはゴブリン草って呼んでる草だ!


 え、嫌な予感しかしないんだけど……

 って事はあの辺に……

 あぁ、やっぱり、崖の上に縄梯子をかけるための杭が刺さってる。

 確定だ。


 ここは妖魔の森……ゴブリン、オーク、コボルド、そんな輩の生息地だ……


 妖魔の森は不思議な地形をしている。

 山の中を瓢箪のような形にくり抜き、そこに木を生やしたような地形だ。


 周囲が全て絶壁で、瓢箪の口に当たる部分だけ平野部と繋がっている。

 外に出るには崖の上から梯子などをかけるような特別な方法を使わない限り、その1箇所の出入り口しかない。


 何故こんな目にあったのかを確認するにも、やられたら仕返しするにしてもここを抜けないと話にならない。


 そもそも、生き残るためにもここを抜けなければならない。

「どうしよう」

 ノープランのまま半泣き状態でも森に向かって行くしかなかった。

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