目先の欲にかられて、スーパーハードで転生したらエゲツない場所スタートだった。でも、後悔は(ちょっとしか)してない。

山親爺大将

第1話 思い出したぁ!

 1人の老人が施設で息を引き取ろうとしていた。


 あぁ、ワシの人生は悪く無い人生だった。

 78歳まで生き、結婚はしなかったから家族は居ないが気の良い仲間には出会えた。

 これで、お迎えが来るならそれも……

 ……

 ……

 うわぁぁぁぁ、思い出した! ちょっと待て! 後2年! 後2年生きらせろぉぉぉぉ!


 バッと、薄暗い空間で目を覚ます。

 不思議と灯りはないはずなのに周りはしっかり見える。


 何もないただただ広い空間になっているだけだが。

 そんな中に真っ黒な立方体の黒曜石の塊で出来たベッドのようなものの上にいた。


 その傍らには、これまた真っ黒な板のようなディスプレイのようなものがある。

「くっそー死ぬ間際に全部思い出すシステム良くないぞ、あれ」


 ここは転生空間、人生が終わるとここに召喚されてまた別の人生を選ぶ場所だ。

 別に俺が特別な人間でもなんでもないんだから、おそらく全ての人間は同じような場所に来て、何処かの何かに転生しているだろうなぁと思ってる。


 思い出したと言っても、きっちり体感として78年経ってるので細かい事は忘れているし、所謂前世の記憶と言うのも1番最近のものだけで、その前に記憶は完全に消えている。


 一応、それ以前にもこの場所に戻ってきた記憶はあるにはあるが、生きていた時の記憶は無いのに、ちゃんと体感として100年以上昔の記憶になっており、微かに特徴的な事を覚えているくらいだ。


 なんにせよ戻ってきたんだから、次に向けて前向きに色々考えないと。

 傍らにあるディスプレイに触れると、さまざまな情報が現れる。

「あぁ、やっぱりご長寿ポイントは80歳からだわぁ、もったいねぇ」


 思わず独り言が出てしまう。

 前の人生が独り身だったせいだろうか、独り言はちょっとした癖みたいになっている。


 外見は肉体が最盛期の20代前半くらいに戻っている。

 まぁ、どんな外見でも見てる人も居ないし、転生したら全然変わっちゃうから何でも良いんだけどね。


 ちなみに、俺が見ているのは今まで生きてきた行動をポイントに変更した転生ポイントの獲得表だった。

「んー、今回の獲得は520ポイント!? なんかやたら低いぞ?」

 獲得表に映った今回の人生獲得ポイントを眺めながら首をかしげる。


「今まで貯めた累計ポイントで1120点かぁ……微妙」


 ディスプレイからポーンと音がして『次の転生を人間で致しますか?』と表示される。


 もちろん、YESにする。

 ここでYESにしないと何か別の生物に転生してしまう。


 一度興味本位でNOにしたら蚊に転生して酷い目にあった。

 ほとんど覚えてないのに、これだけはしっかり覚えている。


 また、ポーンと音がして、転生ポイントが500点引かれる。

 なかなかシビアなポイントを要求される。


 ちゃんと人生終わらせていない人はこのポイント稼げなくて別の生き物に転生しているんではないだろうか?


「今回の人生で増えたポイント20点かよぉ」

 思わず愚痴が出る。


「これはもっと計画的に考えないといつまで経っても良い人生にならないぞ」

 そう言いながら、ディスプレイをスクロールさせて、ポイントの獲得の高いものを探す。


 どれもこれも5ポイントとか10ポイントなどで特別高いものは見当たらない。

「ん?」

 子孫ボーナスのところに気になる点がある。

 他にはこんな点は付いていない。


 子供1人につき1ポイント、孫1人につき2ポイントとなっていて、そんなにポイント獲得に貢献してない項目だったので、今までちゃんと見ていない項目だった。


 俺はその点を押してみた。

 ディスプレイに追加項目が展開される。

 子孫ボーナス

 子 1pt

 孫 2pt


 子孫繁栄特別ボーナス

 子3人 50pt

 子5人 100pt

 子10人 200pt

 以降3人毎に50pt

 孫 10人 200pt

 孫 15人 500pt

 孫 20人 800pt

 以降5人毎に200pt


「な、な、なんだってぇぇぇぇ!」

 そうか、考えてみれば転生するにはその世界に子供が生まれないと転生先が存在しなくなる。


 この転生というシステムが機能する為には、人はたくさん居ないと成り立たない。

 そこに貢献した者にボーナスが与えられるのは、当たり前といえば当たり前か。


 しまった! 今回俺のポイントが低いのは子供を全然作らなかったせいか……。

 そうか! そういう事だったのか!


 古今東西ハーレムだの、後宮だの、大奥だの、あれ作ったやつこの情報知ってたな! (個人の見解です)


 あ、でも、転生するとここの記憶無くなるんだった。

 いや、待てよ、前世の記憶持ってますって人時々居るよな。


 小説でもよく見るし。

 ディスプレイを操作して転生特典一覧の画面に切り替える。


 転生する時にポイントを消費してつける事が出来る特典の一覧表だ。

 前世記憶 600pt

 ……

 ……

 ……

 高くね?

 これ取ったら、俺の残りポイント20ptしか無くなるんだけど。


 あ、年齢補正って項目ある。

 なるほど10歳で思い出すのが基準で、1歳歳が上がる毎に20pt必要ポイントが減って、下がると増えるのか。

 最大で10歳まで上下出来る。


 流石にあんまり歳取ってから前世の記憶思い出しても活用できる気がしないな。

 なんか他にいい方法ないかなぁ?


 お! 異世界転生の説明欄に前世記憶50%って書いてあるぞ!


 考えてみれば現代日本で子供や孫が沢山作るとかハードルがかなり高い。

 異世界に行って、そこが一夫多妻制の世界なら可能性はその方が高そう!


 これはかなりアリな選択肢じゃなかろうか。

 よし! とりあえず、1回取ってみよう。

 ダメそうならまだ間に合うし。


 300pt返ってきた!

 これで年齢5歳上げるとどうなる?

 さらに100pt返ってきた!


 これは、中々の良い選択な気がする!

 でも、どうして異世界転生すると前世の記憶がこんなに安くなるんだろう?


 ちょっと、1回詳しく色々見ておいた方が良さそう。


 しばらく、画面と睨めっこしてわかった事がある。

 異世界転生と聞いて、単純に剣と魔法のファンタジーにいけるつもりになっていたけど、どうやらそんな甘く無いようだ。


 天賦の才の欄が異世界転生にチェックを入れると一気に増えるのを発見したんだけど


 魔法、剣術などというファンタジーチックのものだけじゃなく、電脳ダイブ、宇宙船操縦、果ては光合成なんてのまである。


 その世界における“人“の概念が全く違う可能性もかなりあるようだ。


 そして、こういったその世界でしか使え無さそうな天賦の才は他と比べて少ないポイントで獲得できる。

 うまくハマれば良いけど、全然違う世界に行ったら完全にポイントをドブに捨てる事になる。


 まさかのギャンブル要素がこんな所にあるとは!


 前世の記憶を持っていても、異世界次第で何一つ役に立たない可能性もあるから、安く獲得出来るんだなって事もこれを見て理解した。


 それでも魔法は汎用性の高いやつの半分くらいで、他のように10分の1とかじゃ無いって事は、その世界にいける可能性はそこそこ高いって事だよね……多分。


 よし! こっちは後で考えるとして、他の部分考えよう。

 生まれた時の基本能力値をまず考えよう。

 これはゲームなんかで見るステータスと同じ要領になってる


 強さ  10

 器用  10

 素早さ 10

 知性  10

 耐久力 10

 賢さ  10


 これが平均値でこれを上げたり下げたりして基本能力値を決めるんだけど、俺はこれの盲点を前の時に見つけている。

 子供の時はこの基本能力値に補正がかかって低い、そして大人になった時に重要なのはこれじゃ無い。


 もう1つの項目”基本成長値“

 これは1〜5で設定出来る。

 使用するポイントは設定値×10


 ただし、1つ前の設定を獲得していないと上に上げる事は出来ないので、5まで上げるなら150かかる。


 環境次第でかなり変わるだろうけど、俺的な最適解はこれ!


 基本能力値


 強さ  5

 器用  5

 素早さ 5

 知性  5

 耐久力 7

 賢さ  5


 基本成長値


 強さ  5

 器用  5

 素早さ 5

 知性  5

 耐久力 5

 賢さ  5


 基本能力値を下げた時に戻ってくるポイントをそのまま成長値に入れる。

 流石に耐久力減らしすぎて産まれてすぐここに戻ってきたら、もう転生先がゴキブリとかしか残らないから耐久力は少し多め。


 それでも差し引き90ptで成長値を全てマックスに出来てるんだから、悪くない。


 さて、次は容姿。

 俺は知っている……見た目が悪い事の大変さを!


 もちろん見た目が良いせいで辛い事も有るだろうけど、それでも俺は見た目に妥協はしない!

 俺の人生悪かったとは思わないけど、見た目が良ければもっと豊かな人生歩めていたと真剣に思う!


 なのでここは全力でポイントを投入する!

 ……

 ……

 ……

 え……ポイント高すぎない?


 カテゴリー分けが、1〜5、6〜10、11〜20、21〜30、31〜50

 ってなってて、これも1から順に取らなくてはいけなくて、上のカテゴリー取る為に100pt追加で払うって


 5までが15ptなのに、10まで取るとなると155pt、20だと410pt、30だと765pt、50だと1675pt

 なるほど、世の中に美形が少ないわけだ。


 うーん、でも子孫増やす為にも見た目は重要だしなぁ。

 困った。


 とりあえず天賦の才取ってもう1度考えよう。

 あーでも天賦の才もありすぎてみんな欲しい!


 最低でもギャンブル要素がある代わりに半分で取れる魔法と、汎用性の高い奴は欲しい

 魔法は100ptで取れるから、まず取ってみよう。


 ……待て待て待て、天賦の才2って、これ先あるの!

 2取るには300かぁ、1回取ってみよう。

 あ、はい、天賦の才3もあるのね。

 次は900ね、3倍づつになってるのね。


 足りん!

 ポイントが足りなすぎる!


 やっぱりさっき見つけたあれを試すしか無いのか!

 さっき睨めっこしてる時に見つけた。


 人生難易度


 産まれる環境 ノーマル

 その後の環境 ノーマル


 これ

 これをハードにすると、獲得に必要なポイントが半分、スーパーハードにするとさらに半分。

 両方スーパーハードにすると、なんと16分の1になる。

 容姿50が100ptちょっとで手に入るという魅惑の設定。


 どう考えても美味しすぎだよね。

 これだと基礎能力を10のままにして、前世の記憶13歳くらいで、容姿40に出来る。


 そして世の中実力だけじゃどうにもならない運に関係ある幸運レベル3にして、余ったポイントで他力本願も加味してこの縁って奴を取ってもまだ少しだけポイント余る。


 天賦の才は身体能力をレベル5、魔法をレベル5、さらに棒術もレベル4で取れる。


 棒術は武術の才になっていて少しポイント少ないのが特徴。

 でも、剣や斧と違って、棒なら何処ででも確保出来そうだから、汎用性高いと思って獲得。


 武術の全く必要の無い世界だったら、これもドブ行きだけど。


 あーこれだけ取ったの見てしまうと今更難易度戻す気になれないなぁ。

 なんかこれだったら、スーパーハードな環境でも上手くやれそうな気がするしなぁ。


 魔法使える世界なら、無敵じゃない?

 よし! これで転生しちゃお!


 余ったポイントでこの閃きってやつ取って、転生申請のボタン押して、少し待つ。


「受理されました」


 という声が何処からか聞こえてくる。

 そうして、暗闇に溶け込むように俺の身体は消えていった。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 

 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると作者がとても喜びます。

 よろしくお願いします。

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