第2話
アルトに腕を引かれたまま、俺は王都のレストラン街を歩いていた。
「どこ行くんだ?」と聞いても、「まあまあ、すぐだから」とニコニコ笑ってごまかされるだけ。
そしてたどり着いたのは、意外にもちゃんとしたレストランだった。
中はおしゃれで、半個室っぽく仕切られていて、照明も柔らかい。
「……ここ、マジで高そうなんだけど?」
「平気だよ、今日はパーティーの集まりだし♪」
案内された席には、すでに先客が二人。
アルトのパーティー、《閃光の剣》のメンバーらしい。
「ちょっと、アルト遅いわよ。何やってたのよ?」
そう言ったのは、一人目の女の子。
鋭い吊り目と勝気そうな顔つき、長い銀髪を後ろで束ねた魔法使い——マリ。
二人目は、それとは対照的にふんわりした雰囲気のおっとり系女子。
垂れ目でふわふわの薄緑髪、神官服っぽいローブを着てる回復術師——ルカ。
「ごめんごめん。道中でタツヤに会ったから、誘ってきちゃった」
「はは、急にご一緒させてもらって悪いね」
俺が軽く頭を下げると——
「あら、タツヤさん。久しぶりね」
とマリが意外にも柔らかく笑いかけてきた。
「タツヤさ〜ん、どうぞどうぞ、空いてるとこ座っちゃってくださ〜い」
とルカはふにゃっと笑って手招きしてくる。
どうやら歓迎されてる……っぽい?
◆ ◆ ◆
そのあとは、美味い料理に舌鼓を打ちつつ、最近の冒険者界隈の話やら、王都の流行り物の話やら。
俺みたいなソロ冒険者にはなかなか入ってこない話が多くて、地味に参考になった。
腹もほどよく膨れてきたころ、アルトが水を飲んだ後、ふと口を開く。
「ねえ、タツヤ。今度の任務、一緒に来てくれない?」
「ん? なんかS級でもキツい依頼でも出てたっけ?」
「ワイバーン退治なんだけどね……」
と、アルトが珍しく真面目な顔になる。
「最近、その近くで“ドラゴンの目撃情報”があったの。ワイバーンは囮で、本命が別にいる可能性があるのよ」
なるほど。
ワイバーン単体なら余裕だけど、ドラゴンまで出るとなると話は別だ。
「まあ……暇だし。……ただし、俺に依頼すると高くつくぞ?」
「ふふっ、それくらい覚悟してるよ」
——とまあ、そんな感じで、久しぶりにパーティー戦に参加することが決まった。
◆ ◆ ◆
食事が終わって、みんながそれぞれ帰路につくなか——
俺が席を立った後のテーブルには、アルトとハクの姿が残っていた。
「……ハク。今日は教えてくれてありがとね。タツヤをあんな店に入れる前に止められて、ほんと助かったよ」
「別に。あんたが止めなかったら、私が引きずってでも止めてたから。……いちおう、あんたにも教えてあげただけ」
そう。
この二人こそが、俺の“恋愛妨害コンビ”の正体だった。
これまで何度も不思議と女の子との縁がうまくいかなかった理由——
全部、この二人の謀略のせいだったのだ。
……だが本人である俺は、そんなことにこれっぽっちも気づいていない。
「よし、明日はワイバーン退治か。張り切るぞ、俺!」
——純粋に嫁探しを夢見る最強冒険者・タツヤの戦いは、まだ始まったばかりである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます