第2話

 

 「古今東西に神仏の類は無数にあり、この七福神は、東洋の宗教の縁起のいい神様をセレクトしてコラージュした日本のオリジナルのユニット?ですが、もとは…」



 滔々と、代々、本願寺の僧侶で、よどみなく説教や読経をするのに慣れている家系の出だけあって、福永の商品説明は流麗で、美声も相俟って、顧客やらバイヤーたちも聞き惚れている、というような趣きだった。


 タカラブネ食品が、社運をかけて、満を持して発売される新商品・「七福神カレー」には、これまでの”食品”、夕食メニューの単なるカレー、という概念を遥かに凌駕するような、さまざまなエキストラなメリット、つまりプラスアルファな要素が満載だった。

 いわば、”夢の新商品”で、今年度の「ヒット商品」ナンバーワン、の下馬評も高いのだった。


 薬膳や漢方医学の専門家をアドバイザーに迎え、”養命酒”という薬酒のそれのごとくにスパイスの配分を検討し、現代日本人のニーズに合わせて最もベストなスパイスの”処方”を作成した。

 もともとインド発祥のカレーの本領はそのさまざまな薬効なのだ…お手軽で国民食、ただそれだけではインスタントラーメンと同じであって、健康増進やら食事のコスパ、抗加齢効果、そういうものが成熟してきた日本社会では重視されるべきで、…


 時代のニーズにマッチしたこのカレールーは、スペックの高さに比して割安で、で、広告費は絞って、口コミでじわじわ人気を得て、養命酒さながらに元気が出る、とか、本格的なスパイスカレーの味が簡単に庶民の台所で再現できる、等々の絶賛が寄せられて、下半期のベストセラー商品となった。


 七福神の名前を冠していることを、ちゃんとカレーのイングルジエントに織り込んだ。 福神漬けの場合は、


 

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#七福神の日 掌編小説・『七福神』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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