第12話 そして誰も

 ナースステーションにて。

 横内が去るまで3日前のこと。


「あの、奥津さんに先生が呼んでたこと、伝えてもらっていいですか?」

 

「は、はい」


 沢江が勇気を振り絞って出した会話が、ただの伝言に終わった。

 それ以降、沢江と横内は院内で会うことはなかった。

    ♦︎

 横内がいなくなる2日前。

 沢江のいないナースステーションにて、山内は横内を見つめながら考えていた。

 結局沢江とは何もなかったらしいと、奥津から噂を聞いた。あのあと横内も話しかけたらしいが、沢江はすっとぼけて逃亡。

「彼女にしては頑張った方じゃないかな」と奥津は語る。そもそも、あまり恋愛とかよくわからないタイプの人間だから、と。

 横内も不憫である。あれだけ何かあるのではないか、と自意識過剰になるくらいのことをされて、実際は伝言と逃げの一択を取られてしまったのだから。

   ♦︎

 山内がそう考えていると、横内と目があった。横内は山内に駆け寄る。

「山内さん、異動になるので、お世話になりました」

 横内は告げた。

「あ、あと2日後ですよね。お世話になりました」と山内は言う。「頑張ってください」

「...はい! ありがとうございます」

 横内はなんとも言えないような笑顔を見せて踵を返した。


「そういや、私、明日休みだったわ」

 山内は呟いた。

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