第11話 しゃるうぃだんす

 何かしら話しかけた方が良いのはわかっている。しかし、何も用がない。

 沢江が悩んでいることはそれである。

 話しかけねばと思い何も動かなかった日々に終止符を打つように、横内の異動が公表された。まるで自分の怠慢を見抜かれているようでとても恥ずかしかった。沢江は自分を振り返りながら、遠くで横内を見つめる。

 横内に遠回しに近づいて、何かを話しかけようと一生懸命になって、でも、どうしたら良いかわからない。一体どうしたら良かったのだ。

 私が悪いのか。本当に? 

 反芻するほど、自分の行動が嫌になっていく。沢江は、今まで横内にしてきた自分の行いがとても恥ずかしくなった。

 早く話しかけた方がいいと、いろんな人に言われてきた。手遅れになる前にと、散々忠告されていたではないか。


 気づけば異動の公表から日は経った。


 あれから沢江は、今までの自分という羞恥心と闘ってきた。横内をみようとはしなかった。話しかけようとも、近づこうともしなかった。ずっと自分と闘っていた。

 しかし、気づけば、横内が異動になるまであと3日しかない。

 

 3日なのだ。

 3日で彼は行ってしまう。


「話しかけよう。きちんと、深く」


 沢江は独り言を呟いた。




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