第13話 横内の過去 —Prologue—

 横内という苗字のもとに生まれ育った僕は、昔から何も持たぬ人間だった。構ってくれる人はいたけれど、その人たちもどこかに何かを抱えていて、それを取り外すことに躍起になっていた。また、それを悪影響だと考えずにずっと抱えている人もいた。

 彼らをみて僕を見る。その後によく考えたら、僕は矛盾している人間であるという結論に至る。なぜ僕は何も持たぬ人間であるのに、何かを抱えているのだろう。持つことと抱えることは一緒ではないのか。

 

 その問題とともに,過去を語ろう。

 僕の過去を語ろう。

 それは、僕が今までに交際した、2人の女性について。

 彼女らは魅力的な人間だった。頭も良かったし、顔も良かった。身長も僕より高かったし(自分が低いのかもしれない)、ユーモラスだった。だからかもしれない。ひとりは普通に去っていき、もうひとりは僕に不治の病に罹って会えないと嘘をついて連絡を断った。後者に至っては、その後地方のテレビであたかもカップルのように男とインタビューを受けている姿を僕は見た。以前よりも痩せていて、とても幸せそうに見えた。

 いまひとりなのは、僕自身が魅力のない状態で、魅力的な彼女らと付き合い、また彼女らを傷つけ、勝手に僕が傷ついたからかもしれない。持たぬ状態で持っている彼女らと付き合い、彼女らの愛に僕が何も返せなかったからかもしれない。

 ギブアンドテイク。僕の嫌いな言葉だ。

 自分には、それができないからだ。


 話を戻すと、抱えることと持つことに矛盾があるのかということについて、僕はハッキリと矛盾のように感じる。とてもポジティブな解釈かもしれないし、短絡的な事実解釈かもしれない。しかしこの結論を誰かに聞いてほしい。そして、それを念頭におきながら、僕のこの後に続く語りをつまみ、楽しんでいただけたらと思う。


 何も持たぬ人間なんていない。人間は多かれ少なかれ、大小構わず何かを抱えているのだから。

 何かを抱えているということは、それを解決する選択肢を持っているに等しい。たとえそれが、どうしようもなく辛い選択になるとしても。

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