第6話 突然のスタート
横内が応接室に呼ばれるのは、半年前の就活面接以来であった。横内はあの時の風景を思い出す。介護ベッド1.5床分の革製のソファが両脇に列をなし、その間を長テーブルがすっと通っている。テーブルの行き着く先には液晶テレビがあり、横内が扉をあけるとその黒光り輝く一反木綿と対面することになる。
横内は、事務長はとにかく威圧感がある人だった、と思い返す。そして今回も事務長に呼ばれたのだ。正直、ふつうに仕事をやっていれば、こんなことになることはないのだが、実際に起こってしまっているという事実に怯える。何を言われるのだろう。もしかしたら…。
横内は首を振る。
すると、首が飛ぶイメージが浮かぶ。
もう自分を宥める手段はない。横内は諦めて処刑台に続く廊下をとぼとぼと歩いていった。
♦︎
「ひさしぶりだね」
事務長は低い声でぼそりという。
「仕事はどう?」
「…仕事は」
横内は少し声が詰まる。
「…ええ、少し心配です。仕事を任せてもらえていないので」
「そう」
ふうん、と事務長は鼻を重苦しく鳴らす。やはりあまりいい話ではない、と横内は察した。さて、次はどんなことを言われるのだろう。
「いやあ、少し部署から話を聞いてね。単刀直入に言うと、あまり部署でも人間関係的にうまくやれていないということを聞いたんだよ…ちなみに、どうしてそういう話になったのかな。僕はちょっと心配でね」
「いや、いや。僕は別になんとも」
「そう? 最近は、やつれていて大変そうだって看護師長から聞いたけど」
それは嘘だ、と横内は思う。
「まあ、君がそう言うなら取り立てて聞くことはないけど。客観的に見て君は大変そうだし、ちょうど隣町のうちと同じ系列の病院で看護師の空きが出たんだ」
うん、だから、単刀直入に言うよ。と事務長は前置きをして、
「人事異動だ。君はその病院に転勤してほしいと思う」
と、横内の顔を見据えて話した。
♦︎
横内の異動は、まだ病院全体には公表しないことにはなっている。しかし部署内限定で横内の処刑通告後の3日後に公表されることとなったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます