概要
父の死と共に、過去も未来も空虚となる
派遣社員として東京で一人暮らしを送る及川圭介、47歳。独身。
就職氷河期に夢をあきらめ、工場の寮で働く日々のなか、家族とも疎遠になった。
ある夏の日、田舎に住む父親の訃報が届き、20年ぶりに帰郷することに。
母は大学卒業の年に家を出て以来、連絡すらなかった。父の死にも何の反応もない。
初盆と納骨のため向かった実家で、父が残したノート、ひとつの湯呑、幻のような後ろ姿……それらが封じていた“家族の空白”が、静かに圭介の心を揺らしていく。
就職氷河期に夢をあきらめ、工場の寮で働く日々のなか、家族とも疎遠になった。
ある夏の日、田舎に住む父親の訃報が届き、20年ぶりに帰郷することに。
母は大学卒業の年に家を出て以来、連絡すらなかった。父の死にも何の反応もない。
初盆と納骨のため向かった実家で、父が残したノート、ひとつの湯呑、幻のような後ろ姿……それらが封じていた“家族の空白”が、静かに圭介の心を揺らしていく。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!蝉の声に重なる、記憶と喪失の余韻
静かで乾いた筆致のなかに、濃密な余韻を残す作品でした。父の死をきっかけに田舎へ帰った主人公の目を通し、「家族の不在」「記憶の残滓」「抜け殻としての生」を描いています。
派手な展開や感情の爆発はなく、淡々とした日常の描写が続きますが、その静けさの奥に重層的な感情が沈殿していて、読み進めるほどに心に沁みます。とくに父の残したノートの断片的な言葉や、墓前で見た白い服の幻影は、記憶の曖昧さと喪失の痛みを象徴しており、忘却と生の空虚さを美しく刻んでいました。
最後に映る「抜け殻すら残せるのか」という問いは、作品を読んだ者の胸にも響き、読後に長い余韻を残します。夏の蝉の声とともに、人が何を残し、何…続きを読む