五番目の防音室

『五番目の防音室』


お疲れ〜! 最近? そうそう、転職したんだよねー。学校事務!

めっちゃ楽しいよ。でもさ、ちょっと変なことがあって……聞きたい?


今度、お盆休みあるじゃん?

だからその前に、全職員で大掃除をしててさ。

新人の私は、二階の音楽室を任されたの。


ほんと、最近暑いよね〜。もう、熱中症になりかけながら掃除してたんだけど笑

そのとき、音楽準備室の奥に、見慣れないドアを見つけたの。


白い紙に、「⑤」って大きく書いてあって、その下に赤いマジックで「×」って書かれててさ。

何これ?と思って開けてみたら、狭くてホコリだらけの防音室。

中には、真っ白にくすんだアップライトピアノが一台だけ。


うわーこれは時間かかるな、と思って、ピアノのホコリを払って、蓋を開けたの。

そしたら──

バンッ!! て、すごい勢いで蓋が閉まってきてさ。


え? って一瞬固まったけど。咄嗟に手を引っ込めたからよかったものの、もう少し遅かったら指いってたかも。


そのあと、休憩中に先輩に聞いてみたの。「五番目の防音室って使ってるんですか?」って。

そしたら、先輩が一瞬固まって、「……入ったんですか?」って、めちゃくちゃ真顔で返してきたの。


聞いた話だと、昔その部屋で、あるピアノの先生が生徒に対してやらかしたらしくて。

ミスばっかりする生徒にキレて、わざとピアノの蓋で指を挟んだんだって。

大怪我にはならなかったらしいけど、その先生はすぐ辞めて、生徒もいつの間にか来なくなったらしい。


それ以来、その部屋は封鎖されてて……「×」のマークも、そのとき貼られたものらしい。

呪いの部屋、ってわけじゃないけど、先生の怒りが、まだあそこに残ってるのかもね、って。


いやーまさか、自分の身にその怒りが降りかかるなんて思ってなかったよ。

ほんと、びっくりした。


で、その日の夜、熱中症でぶっ倒れて、そのまま救急車コース。笑

大掃除、ほんと命がけだよ〜💦


……あ、そういえば、今も左手の中指だけ、感覚がちょっと変なんだよね。

蓋、ちゃんと避けたはずなのに……おかしいよね?

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