番外編・前世のメーチェとヒユノー1
メーチェはヒユノーを背負って帰路へとついていた。もう夜も遅く暗いこと、人通りの少ない道を選んで帰っていることからメーチェは今のところ誰にも声をかけられていない。よく行く店の人に顔を覚えられているだけでメーチェは外に知人などいないが、あまり声をかけられたくない状態であることは明白だ。
ヒユノーが気を失っている理由を求められても難しく、病院に連れて行くことも勧められたくない。何よりメーチェの精神面の問題として人と会話をしたくなかった。
ルティアもジョンドも優しいから許してくれただけで、命を奪われてもおかしくないことをメーチェはやってしまった。許されたのだから今後の自分の行動で償っていこうとは考えていても、落ち込むなという方が無理な話である。
それに、告白を取り下げるなんて言ったがメーチェは今でもジョンドのことが好きなのだ。前世では振り向いてもらえないと察していてもずっと片思いを続けていたのである。一度生まれ変わって、今の主人がジョンドを好きだと認識したくらいでスッパリ諦められる恋心ではなかった。
正直、なんであんなことを口走ったのだろうと思っている。
別に取り下げなくても良かったはずだ。今日のところは引き下がって後日また改めて話をしてもいい。そう理性では告げていても結局メーチェにその選択肢は取れなかっただろう。
自分の恋心をきっかけにこんな騒動を起こして、お咎めも無しに許してもらえて、その上で恋を諦めるなというのはメーチェが自分で自分を許すことが出来ない。だから、きっと、メーチェにこれ以外の道は選べなかった。
そう納得していても、やはり未練も少しはあるものでメーチェは大きくため息を吐いた。ルティアもジョンドもいない空間だから出来ることである。
「…………んん」
「ヒユノーさん起きました~?」
背中で少し動いたのが伝わったから声をかけたけれど返事はない。どうやらまだ意識を取り戻してはいないようだ。一体どこまでの強さの毒を仕込んでいたのか。自分がやったこととはいえ罪悪感は生まれる。それと同時にルティアに当たらなくて本当に良かったとも思うけれど。
……久しぶりにジョンドと会ったり色々なことが起こったからだろうか。メーチェは背中越しにヒユノーの重さを感じながらふと前世のことを思い出していた。
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