第35話・ルティアの決意
不意に意識が浮上する。ボーッとした頭のまま周囲を見渡せば、そこは間違いなく私の部屋だった。電気が消えてカーテンも閉め切っているから薄暗いけれど間違いない。毎日寝起きしている私の部屋を見間違えるはずがないのだ。
はて、昨夜の私に自分のベッドまでたどり着いた記憶はない。上半身を起こして寝る前に何があったか思い出そうとすると、昨夜の出来事がフラッシュバックした。
勢いでジョンド様に告白してしまったことが頭を過って私は衝動のまま枕を掴むと思いっきり抱き締めた。今の時間が分からなかったから叫ばなかったのはギリギリで私の理性が働いた結果である。
ああ。やっちゃった。やってしまった。後戻り出来ないことを私はしたのだ。あの瞬間を思い出すだけで胸がバクバクして喉が渇いて気持ちの置き場が分からなくなる。ジョンド様が言っていたこともどうにか思い出せる。どれだけ沸騰していても私の頭はジョンド様の言葉を聞き流すことも忘れることもしなかったらしい。
そのことに安堵しながらも、もっと私のことを知りたいと言われたことに対して嬉しさと恥ずかしさが同時に込み上げてくる。断られなかったのはいいけれど、恋愛が初めてな私には何をどうやって知ってもらえたらいいか分からない。……婚約者だったあの人は良くも悪くも私が何を言っても否定しないであろうことが薄らと伝わっていたから、自分のことを話すのに躊躇いはなかった。
だけどジョンド様は違う。多分今からが私とジョンド様の始まりなのだ。
私は勢いのままベッドから降りると窓際まで歩いていってカーテンを思いっきり開けた。どうやら夜明けに近い時間だったらしく、昇り始めている太陽の光が私の部屋の中に入ってくる。その眩しさに少しだけ目を細めながら私は気合いを入れるように自分の頬をペチンと叩いた。
「ジョンド様、私、頑張ってみますね」
誰にも聞かれずに吐いた決意の言葉は朝焼けの中に溶けていった。
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