第13話 告白
アンジェラの言葉には、どんな戦略理論よりも重たい、切実な祈りが込められていた。
「あなたを見て、戦って……初めて希望を感じたの。
理屈じゃない。
“ああ、この人なら、何かを変えられるかもしれない”って」
ジョージは、その視線から目をそらすことができなかった。
(……この人、本気で、俺を信じようとしてる)静かに、ジョージは深く息を吐いた。
「……わかった。君を信じよう、こっちの話もする。信じられないかもしれないが......」
そして彼は、あの夜――家族で食卓を囲んでいた瞬間から始まり、“白い空間”に転送されたこと、
そしてあの少年の姿をした“神”のような存在に会ったことまでを、ゆっくりと語り始めた。
「本当は“異世界”、別の世界に転生されるはずだった。
でも何かのトラブルで……5000年後の元いた世界、つまりこの未来に飛ばされたんだ」
「……待って。異世界?神?転生……?」
アンジェラの眉が僅かにひそめられる。
さすがにアライアンス最高司令官ですらこの真実を聞いて動揺は隠せなかった
「まるで、昔の物語の設定みたいじゃない。それを、信じろと?」
「信じなくてもいい。だが、事実なんだ」
ジョージは腕を持ち上げ、意識を集中する。
指先にイメージが走る。
《ステータス》視認できないが、ジョージの内心には透明なパネルが浮かんでいた。
「俺には、“スキル”や“ステータス”って概念が存在してる。
数値で身体能力が把握できて、インベントリで物を格納できる。
装備の切り替えもスキルの一つだ。
実技試験の現象もヘイトコントロールと言って周りの認識した対象を強制的に自分へターゲットさせる技だ」
「……嘘じゃないのね」
「現実じゃあり得ない能力だ。でも、俺の家族全員にも備わっている。
妻、娘、息子……全員がそれぞれ“クラス”と“固有スキル”を持ってるはずだ」
アンジェラは立ち上がって、一歩ジョージに近づくと、まるで何かを確かめるように静かに彼の顔を見つめた。
「異世界の理から来た能力。
それが本当なら、アライアンスの全兵士の枠組みを超えている。
――この戦況を覆せるかもね......なんかずるいわね、まるでゲームでいうチートね」
ジョージは苦笑する。
「そう呼ぶ奴も、いたかもな。まあ、実際そうなんだろう。
普通の兵士なら、すでに完封できるぐらいの戦闘力が備わっているのも事実だ」
「……」アンジェラは数秒黙ったのち、静かに言った。
「家族って、今どこにいるの?」
「神から聞いた情報では、妻はアースに、娘はルミナに、息子はザナにいる。
ただ、場所の詳細も状況も不明だ」
「……そう」アンジェラは背を向け、窓もない壁に目を向けた。
まるで何かを祈っているかのように。
「あなたたち家族は、普通じゃない。常識の外にいる。
でも……そんな“常識外”が今の銀河には必要だわ」
彼女は振り返り、声を強めた。
「あなたとその家族が、この戦争を終わらせる可能性があると判断するわ。
だから……正式に提案するわ」
ジョージは身を乗り出す。
「何をすればいい?」
「――《調査艦アトラス》へ配属するわ。
アライアンスの中でも、最高機密かつ最精鋭の部隊。
銀河を飛び回って、危険をかえりみず真実に迫る任務ばかりよ。あなたの力を、そこに使いたい」
ジョージはしばらく黙ってから、力強く頷いた。
「わかった。やらせてくれ。その引き換えに家族を見つける協力を頼む」
アンジェラは深く息を吐き、微笑んだ顔で頷いた。
「ありがとう、セト・ジョージ」
続けて静かに、だが確信を込めた声で告げた。
「……《アトラス》は、ただの調査艦じゃない。
“真実”にたどり着きたい強い意思を持っている者しか乗れない、銀河の境界線をも超えられる艦。
だからこそ、あなたに参加してほしい」
そして、一歩ジョージに近づいて、まっすぐに目を合わせた。
「覚悟して。セト・ジョージ。あなたはもう、“運命を変える側の人間”よ」
ジョージはその言葉に、わずかに口元を緩めた。
「望むところだ」
こうして、異世界から来た男は、銀河戦争の真実を追い求める《アトラス》の扉を開いた。
それが、宇宙に刻まれる――新たな歴史の始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます