第5話 異世界攻略

魔力移し。それは魔族にしか使えない特技である。簡単に言うと、ディープキスで魔力を分け与えることができるということだ。ただし、魔族から人間に送ることは可能だが、人間から魔族は魔力移しは出来ないらしい。


「魔王様。」

「ザキ、」


お互いの唇が触れ合う。俺にとっては初めての感覚。ザキのフローラルな香りが漂い、俺の理性を吹き飛ばした。

すると、もう一つの感覚が襲う。ベロを入れられたようだ。こそばゆい感覚と気持ちよさが混ざり合ってゆく。それと同時に、体の中からエネルギーが吸い取られてゆくのを感じた。きっと魔力が俺達の舌を通って流れていっているのだろう。


「ぷはぁ」


ザキが俺の唇から離れた。その顔はとても満足そうだった。


「ありがとうございます魔王様。やはり魔王様の魔力はどの魔力よりも美味しく感じました。」

「お、おう。そうか。」


俺は唖然としていた。初めてのキス、初めてのディープキス。まさか人生でこんな体験するとは思わなかった。

いや今は人ではないが。


「なあ、ザキ。」

「はい。何でしょうか?」

「俺が勇者に殺されない方法はあるか?」

「そうですね。戦闘では必ず負けてしまいますから。やはり和解するのが一番かと。」

「そうか。それが一番かもな。」

「ええ。不可能ではありませんよ。魔王様の頑張りしだいですが。」


よし。決めた。俺はこの世界で生きる。理由?そんなのまたキスがしたいからに決まっているだろ。

ただ、この世界で俺は最弱だ。これから先、いばらの道を進んでいくようなものだ。


それでも俺は、この世界で生きていく。最弱な魔王がこの世界を攻略してやる!



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