第18話
第18話
鏡が私たちに向かって回転し、健太と結衣の苦しむ顔が映し出されたとき、私たちは立ちすくんだ。鏡の中から響く健太の声は、恐怖ではなく憎しみに満ちていた。
「…次は、お前たちの番だ」
「これは、ただの幻影じゃない。鏡は、彼らの後悔を具現化し、私たちへの呪いに変えているんだ」
悠真はそう言い、兄の手記を改めて見つめた。手記の端に、兄の走り書きを見つけた。
「鏡は、『真実』を映す。しかし、その真実を『赦し』に変える鍵は、鏡の『外』にある」
「鏡の『外』…?」
私は鏡から目を離し、周囲を見渡した。教室の壁、床、天井。すべてが不気味に歪んでいる。この部屋のどこかに、鏡の呪いを断ち切る手がかりがあるはずだ。
「鏡に映ってるのは、健太と結衣が最も後悔している記憶だ。彼らを助けるには、その記憶を『浄化』してやる必要がある」
悠真は、健太が過去に抱えていたいじめを止められなかった後悔、そして結衣が悠真の計画を止められなかった後悔を思い出す。
「この部屋は、俺たちの後悔を喰らう。でも、俺たちが彼らの後悔を受け入れ、『懺悔』の気持ちで向き合えば、鏡は真実だけを映し出すはずだ」
私たちは、健太と結衣を救うために、鏡に向かって歩み始めた。鏡に近づくにつれて、回転は激しくなり、健太の顔がこちらを睨みつける。
「来るな!お前たちのせいだ!」
鏡の中から、健太の叫び声が響く。
「健太!違う!僕たちは、君を助けに来たんだ!」
悠真が鏡に向かって叫ぶが、鏡の健太は憎しみの表情を変えない。
その時、陽菜が鏡に映る結衣の顔を見つめながら、静かに語りかけた。
「結衣ちゃん。あなたは、悠真くんを止められなかったことを後悔している。でも、それは裏切りじゃない。私たちを心配してくれていたからでしょ?」
陽菜の言葉に、鏡の中の結衣の表情が一瞬揺らぐ。
「……違う。私は、怖かったの。悠真くんを信じて、これ以上深入りするのが……」
結衣の言葉が、かすかに鏡の中から聞こえてきた。彼女の後悔は、悠真への不信感ではなく、恐怖から生まれたものだった。
「私たちは、もう逃げない。この部屋で、全部終わらせる」
私は鏡に向かってそう宣言し、手を伸ばした。鏡に触れた瞬間、激しい光と衝撃が私たちを襲った。
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