第8話 大団円

季節は年末になり木枯らしが吹くころ、田尾は管と紀子と湊の4人で今後の事を話していた。

「総理には国会終了後、病気(がん)になってもらいます。ステージは4で末期。政治から引退して故郷で療養してもらいます。後は私にまかしてください。奥さんもそれでいいですね」

田尾は四国に帰ってまた田尾一樹として暮らすと思っていた。ところが、紀子が「いっしょに地元広島に帰り、自宅療養することにしましょう」と誘ってきた。「その方が、足が付き難い。紀子さん、ありがとうございます。田尾さんも宜しいですね」と管はすぐに賛成した。

田尾はこれでゆっくりできる。慌ただしい1年だったと思った。

「ところで菅さん、内調の佐々木さんが約束してくれたアルバイト代はいくらくれるんですか」

「内閣官房費から1千万×12月で1億2千万を支払います」

「ええぇ、そんなに貰えるのですか」

1億2千万か、一生問題なく暮らせるな。やっぱり、アルバイトは総理にかぎるなと思った。


「総理、仁藤防衛大臣がお見えです」

「総理、失礼いたします。ああ官房長官もお出でですか、丁度よかった。防衛省の情報本部より報告がございました。真偽のほどは分かりませんが、お伝えいたします。あえて文書にはいたしません」

「どうぞ」

「矢部総理が亡くなり、今の総理は田尾一樹という民間人ではないか」との報告です。

「これが事実であれば民自党が崩壊します」

「仁藤さんはどうお思いか」

「私はそんな事はあり得ないと思っております」管が仁藤をジッと見る。

矢部は少し驚いた表情で「私は矢部です。仁藤さんの冗談はなかなか笑えませんね」と言った。

仁藤は管の監視をするような眼が気になったが、早々に退席した。

「総理、防衛省の情報本部は完全に今回の事を疑っています。でも証拠(矢部の遺体)は絶対にありません。安心してください」

「管さん、総理のご遺体はどうなったのですか」

「広島まで秘密裏に送り、後は奥様にまかせました。でも総理には早々に病気になってもらわないといけませんね」

そして、2月矢部総理は末期がんを患った事を発表し、政界を引退した。



作者です。


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