第7話 女の感は・・・・・

官房長官の菅喜朗は、佐々木と会っていた。

「この1年、ご苦労様でした。予定通りに進んでいます。あなたも元のセクションに帰ってゆっくり過ごして下さい。報酬は機密費から振り込んでおきます」

「ありがとございます」

佐々木が退出した後、

「今国会が終了したら矢部総理は検査入院し、がんの宣告を受け、皆から惜しまれながら政治家を引退する。そして、民自党の幹部の話し合いで私が次の総理大臣になる」独り言を言う管であった。


その頃秘書の山際は、婚約者の自衛官藤本に矢部の変わり様を話していた。

「とにかく、人が変わった様なのよ」

「生死を彷徨うと、人間が変わるって言うしな」

「そうじゃない、誰かが入れ替わっているのよ」

「それは無いな。首相が昔でいう影武者ってこと。でも沙耶以外は気づいてない。秘書官や秘書達、そして奥さんや弟さんも」

「うん、そう」

「それはありえないな。まあ、俺達には関係ないし、沙耶が仕事クビになるわけでもないし、もういいよ。おいしいディナーが冷めてしまうよ」

「そうね。いただきます」


沙耶と別れた藤本は自衛隊の情報部を訪ねた。

「一等陸尉の藤本孝之であります」

「藤本、何かわかったか」

「は、矢部総理の秘書が私の婚約者であります」

「普通にしゃべりなさい」

「はい、彼女が言うには銃撃前の総理と後の総理に違和感を感じるそうです」

「違和感」

「はい、彼女は誰かが入れ替わっているといっています。ただし、秘書官や奥さん、弟さん近しい代議士先生達はだれもそんな事は言っていないそうです」

「わかった。ご苦労様」

「失礼します」


真田は思わず「ああ、田尾か。矢部総理の変わり。でも矢部はどうした」頭を整理してみる。

内調が田尾をアジトに連れっていった日=阿部野が撃たれた日→5日後、矢部は元気に退院して選挙戦に→そして民自党の大勝。

もし、狙撃で矢部が死んでいたら、影武者など無くても、同情票が集まり民自党の大勝は変わらない。

では、狙撃では死なず重体で入院していたら、陰りの見えた矢部政権では選挙は勝ち抜けない。

それで、影武者田尾の登場か。

なぜ四国の片田舎の田尾を内調が知っていた。ITS(高度道路交通システム)か、いや田尾は車を持っていない。

※実は移動販売車は、過疎の村落の担当地区を巡回販売する。そのため生活の支援(防犯や独居老人の見守りなどを行政から委託されて)車載カメラを装備していた。


真田は防衛大臣に報告することにした。防衛大臣の仁藤隆は報告を受け、本当であれば大変なスキャンダルになり、政権どころではない。民自党が吹っ飛んでしまうと思った。



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