第24話 本音と選択と涙と」

朝の光が窓から差し込み、教室はまだ静かだった。

 こはるは窓辺に座り、深く息を吐く。


(もう逃げられない。自分の気持ちに、向き合わなきゃ)


 スマホには、黒川からのメッセージが何度も届いている。

 だが、返事はまだできない。



 廊下の端。黒川はそわそわと足踏みを繰り返す。

 不安と緊張で眠れなかった夜の名残で、目が少し赤い。


(俺がどんなに言っても、信じてもらえないなら……)


(でも、やらなきゃ終わらない)



 教室のドアが開き、佐伯が少し遅れて入ってきた。

 その瞳は真剣で、けれど優しさで満ちていた。



 昼休み。


 放課後、校庭のベンチ。こはるが先に座っている。

 間もなく、黒川と佐伯が、それぞれの歩幅で近づいてきた。



「こはる、話そう」


 黒川の声は少し震えている。


「うん……私も、ちゃんと伝えたい」



 ふたりが静かに本音を語り合う。

 「信じてほしい」「信じたい」「怖い」「傷つきたくない」——

 たくさんの言葉が交差し、こぼれ落ちる涙が空を濡らす。



 そして佐伯も、自分の気持ちを包み隠さず告げる。


「ずっと待ってる。どんな答えでも、俺は受け止める」



 その午後。こはるは初めて心から泣きながら、決断の言葉を口にした。


「私……選ぶよ」

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