本当の俺は、君にだけ

夕暮れの校庭。

　こはるは深呼吸をして、二人の前に立った。

「私、決めたよ。誰かを選ぶって、怖いけど……でも、後悔したくないから」

　その瞳はまっすぐで、強く光っていた。

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「黒川くん。あなたのことはずっと好きだった。

　あの時のこと、今でも忘れられない。だけど……」

　黒川の目が真剣にこはるを見つめる。

「私、もっとあなたのこと、信じたい。

　そして、ちゃんと向き合いたい」

　涙が頬を伝う。

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「佐伯くん。あなたがずっと私を見守ってくれてたのも知ってる。

　優しさに包まれてるのが嬉しかった。でも……」

　こはるは言葉を詰まらせながら、続けた。

「私の“好き”は、あなたへの安心とは違う。

　だから、今は違う道を歩みたい」

　佐伯は静かにうなずいた。

「君の幸せを願ってる。それが俺の本心だから」

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　黒川が手を差し出す。

「これからは、一緒に歩こう」

　こはるは少し迷った後、そっとその手を取った。

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　空が茜色に染まる中、ふたりはゆっくりと校庭を歩き出した。

　佐伯は笑顔で見送った。

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　新しい未来が、今、始まる。