ひつじ

「羊の夢を見るんだ」

少年はそう言うと頭蓋を棚の上に置いた。巻き角が生えている時点でどう見てもヤギの頭骨だ。それを羊だと言って棚に並べる

「それはヤギでは」

「羊だよ」

少年は羊という頭骨を置き終えるとロッキングチェアにもたれる

どうぞと言う手が差し出されるまま俺はテーブルの椅子に腰かける

「羊は夢を見ると思う?」

そう問う少年の意図がわからない、生き物だ。夢ぐらいは見るのだろう。

只、人間ではない為、意思疎通はできないが、動物は等しく夢を見るものだというのが俺の考えだ

「どんな、夢をみるんだろうね」

俺は何も言っていないが見透かしているかのように少年は言葉を続ける。羊が見る夢、一体何だろうか、興味もないし、なんでもいい

「さあ」

そう俺が答えると、少年はふふふと笑って、ロッキングチェアを揺らす

「もこもこの夢をみるんだよ」

少年らしいし、少年らしくない答えだった。幼稚園児の答え、だがこの年頃の子はこんな言葉を使うのもありえる

「もこもこの夢・・・か」

そう思うと実に楽し気に思えて来た

こんな夢も悪くはない

俺は目を閉じ、そして深呼吸した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩編 @Nantouka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る