第3話 画面越しの心音
夜の静けさに包まれた部屋の隅で、
彼女は画面を見つめていた。
凛は、もう何日もまともに眠れず、
心の奥にぽっかりと空いた
穴を抱えていた。
大学の講義も友達との会話も、
どこか遠くの世界のことのようで、
自分だけが透明になったように
感じていた。
そんな時、偶然見つけたのが、
翔太の投稿だった。
「光って、ただ眩しいだけじゃない。
暗い場所にある僕の心を、
そっと照らしてくれるものなんだ」
短い言葉の端々に、
凛は自分の痛みが映っているのを感じた。
画面越しに、誰かの心の震えが伝わってくる。
涙がこぼれた。
自分でも驚くほど、自然に流れた。
「わたしだけじゃないんだ……」
翔太という名前も知らない誰かの言葉が、
孤独だった凛の胸のなかで、
ぽっと小さな火を灯した。
翌日、彼女は久しぶりに部屋のカーテンを開け、
朝の光を浴びた。
まだ痛みは消えない。
でも、心に灯ったその火が、
わずかでも生きる力になっていた。
画面の向こうで、
同じ夜空を見上げる誰かがいる。
それだけで、
彼女は少しだけ前を向けそうだった。
──画面越しに響く、誰かの心音。
それは、確かな命のリズムだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます